芸術とは芸術家が自分の思いを表現したもの-といった、美や芸術に関する現代の常識は近代欧州で成立した。その経緯をたどり、芸術とは何かを解説する。
例えば、均整の取れた美という伝統的基準で測れない「崇高」の概念は18世紀に成立。近代には自然の壮大さが描かれたが、現代アートでは図像で表現できないものが提示される。戦後米国の抽象表現主義を代表するニューマンは、巨大キャンバスをほぼ一色で塗った。キリスト教などが共同体共通の宗教でなくなった現代において、崇高なものを示すためという。現代アートへの理解が深まる。(ちくま新書・1210円)
-
2023年10月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです