『箱根駅伝に魅せられて』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
<書評>『箱根駅伝に魅せられて』生島淳 著
[レビュアー] 満薗文博(スポーツジャーナリスト)
◆ランナーの日常に迫る
いまや、新年の「風物詩」となって、正月に彩りを添える箱根駅伝は、2024年、第100回の記念大会を迎える。この大きな節目を前に、著者が東北で生まれ育った少年時代から今日まで「魅せられ続けて来た」箱根駅伝の魅力をつづったコラム集である。
それらは旺盛な、いわゆる「じか当たり」(直接取材)から紡ぎ出されたものが主軸になっている。テレビ・ラジオなどのメディアでも活躍する著者らしい一冊である。駅伝ファンならずとも、耳にしたことのある「名物監督」や瀬古利彦氏らとのやりとりは、駅伝をテーマにしながら、実は人生論だったりする。
100年の歴史を振り返りつつ、現在を生きる大学ランナーの日常を捉えた項目は興味深い。走りっぷりは目にしても「私」部分はなかなか伝わって来ない。そこを「合宿所」「朝練と門限、そして消灯時間」「授業」などの項目で、さりげなく書く。よほどの食い込みがなければ著せない現代若者気質を、56歳の著者が書くおもしろさも一読に値する。
(角川新書・990円)
1967年生まれ。スポーツライター。著書『エディー・ウォーズ』。
◆もう1冊
『スポーツの現在と過去・未来』船原勝英著(創文企画)