『ワクチンを学び直す』
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改めて知りたいワクチンって何?
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
新型コロナの5類移行から半年、人々がガードを下げるのを待っていたかのように、ちまたには各種の感染症が溢れ出した。インフルエンザ、手足口病、ロタウイルス感染症、プール熱、ヘルパンギーナ……感染症というものはこんなにもたくさんあったか、と改めて驚くほどだ。
今こそワクチンの出番―であるはずだが、長きにわたったコロナ禍を経て、我々にはワクチンに関する玉石混交の様々な情報が植え付けられてしまった。今一度これを整理するために読みたいのが、岩田健太郎『ワクチンを学び直す』だ。ワクチンの歴史、効果を表す原理のほか、新型コロナを含めた各種の感染症に対するワクチンについて、専門医から見た情報と論評がまとめられている。これまで一般向けの解説書を多数ものしてきた著者ならではの、硬軟とり混ぜた独特の文体で、このへんは好き嫌いが分かれるところだろう。
自ら「空気を読まない」という著者らしく、ワクチンを含めた感染症行政についても、ビシビシと切り込んでいる。合理性の低いワクチンについては容赦なく論評するし、本当に恐ろしい感染症である狂犬病については、しっかりした対策を訴える。このあたりは、感染症に対する著者の深い理解があればこそだろう。
しかし、予防接種制度の無駄の多さ、ワクチン開発能力の低下など、日本の感染症対策の抱える問題はあまりにも根深いと感じる。コロナ禍を教訓に、反省すべき点は多そうだ。