「余命半年」の末期がんになった倉田真由美の夫…の深刻さ皆無な驚くべきメンタルが発揮された本

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エンドロール!

『エンドロール!』

著者
叶井俊太郎 [著]
出版社
サイゾー
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784866251776
発売日
2023/11/10
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

余命宣告されても、深刻さ皆無。適当でお気楽、このメンタルは見習うべし

[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)

 手違いで買い付けた映画『アメリ』が大ヒットして月9ドラマ『東京ラブ・シネマ』のモデル(演じるのは江口洋介!)になったことと、それ以外の映画はことごとく大失敗したこと。そして、自分で立ち上げた映画配給会社が負債3億円を抱えて倒産したことや異常なヤリチンぶりについて、『ダメになってもだいじょうぶ 600人とSEXして4回結婚して破産してわかること』という本にしたことでも知られる叶井俊太郎。22年6月に末期がんで余命半年と宣告された彼が今回、鈴木敏夫や奥山和由といった友人知人との対談本を出したんだが、さすがに人生を真面目に考えて深い話でもしてるのかと思ったら、これがまた「末期がん患者との対談本って今までにない前代未聞の企画じゃないですか? いやーかなり楽しかった」って感じで深刻さ皆無だからビックリした。

 もともと「オレってほんと適当でお気楽、その場のノリだけで何も考えてない」と公言していたような人だったけど、余命宣告されても「精神が強いというより、何も考えてないんだよね。精神的なところで、鬱にもならず、悲観もしてない。どうせオレ死んじゃうし」と発言。

 何度も死のうとした中村うさぎが「今まで叶井さんを見習おうと思ったことは一度もないんだけど」「今日初めて、このメンタルはみんな見習うべきだと思った。あなたの女癖とかさ、だらしないところだとか、ちゃらんぽらんな生き方とか」「こんな人マネしちゃダメだよって思うけど」と言ってたけど、ホントそう思う。

 なお、彼の妻で漫画家の倉田真由美は「夫のがんが判明した昨年は、人生で一番泣いた一年だった」そうなんだが、そんな彼女の前で「『うう、腹が痛い』。苦しそうな様子の夫。『え!?』。驚き青くなる私。『うそ~』笑う夫」という絶対やっちゃいけない冗談を連発しているというのも、いちいちとんでもないメンタルの持ち主なのであった。

新潮社 週刊新潮
2023年11月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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