<書評>『はたちの時代 60年代と私』重信房子 著

レビュー

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<書評>『はたちの時代 60年代と私』重信房子 著

[レビュアー] 小林哲夫(教育ジャーナリスト)

◆誤りや失敗…体験 淡々と

 友人の男子大学生(21)が著者と話す機会があった。私は彼に著者のことを聞くと「生ける新選組ですよ」と話してくれた。日本史の教科書の記された新選組と同一線上で赤軍派を受け止めたようだ。赤軍派も近現代史のワンシーンであり、入試で出題されてもおかしくない。

 1960年代の新左翼運動の歴史は当事者の回顧録をもとに刻まれることがある。その中には自慢めいたノスタルジー色が強いものがあり、全共闘世代が酒場で「戦友会」的に盛り上がる話の域を出ない。内ゲバなど負の歴史を避ける向きがある。これでは社会運動の歴史をきちんと次の世代に伝えることはできない。

 本書では著者の体験が誇張されることなくたんたんと語られており、史実を確かめる資料としてはとても参考になる。誤りや失敗の歴史もよくわかった。

 しかし、触れられていないことがある。著者自身が帰国した経緯、他の元日本赤軍メンバーの動向などだ。関係者が現存し公にできない話もあるだろうが、いつか、つまびらかにしてほしい。

(太田出版・2860円)

1945年生まれ。日本赤軍の元最高幹部。昨年、出所した。

◆もう1冊

『日本の近現代史述講 歴史をつくるもの』(上)(下)坂野潤治、三谷太一郎著(中央公論新社)

中日新聞 東京新聞
2023年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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