『思考を耕すノートのつくり方』
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メモとノートの上手な使い分けは?長く活用できる「思考ノート」のつくり方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『思考を耕すノートのつくり方』(倉下忠憲 著、イースト・プレス)の著者は、仕事、趣味、勉強、研究、家事など、人生のいろいろな局面でノートを使ってきたのだそうです。
でも、なぜそれほどノートを使うことが大切だったのでしょうか?
それはノートが「考える」という行為をサポートしてくれるからです。人の思考をより広く、柔軟に発揮させてくれる力をノートは持っています。
畑を耕せば作物が育ちやすくなるのと同じように、ノートを使えばアイデアや考えが伸び伸びと発展していくのです。(「はじめに」より)
ただ、それほど便利で身近な道具なのに、ノートに苦手意識を感じている方も少なくないかもしれません。しかし、そうした気持ちを持っている人は、単に「ノートを使う」ことに慣れていないだけなのかも知れないと著者はいいます。
ちなみに、ノートを使ううえで大切なことは3つあるようです。まず1つ目は、当たり前ではありますがですが「書くこと」。2つ目は「続けること」。書き続けることで、ノートの価値が増えていくわけです。そして3つ目は、「自分なりの書き方を確立すること」。
自分に合った書き方は人それぞれ違うので、適した書き方を見つけられれば、ノートは素晴らしいツールになるということです。
本書では、ノートの書き方・使い方をちょっと格好をつけて「ノーティング」と呼び、そのノーティングをそれぞれの人が自分にあったスタイルで構築できるようになることを目指しました。(「はじめに」より)
きょうは、こうした考え方に基づく本書のなかからChapter 4「ノートQ&A」に焦点を当て、ノートについての2つの基礎知識を確認してみたいと思います。
「思考ノート」まず、なにから始めるのか
Q「とりあえず、何から始めたらいいですか」
A「いま興味があるテーマのノートを1冊作りましょう」
(193ページより)
さまざまな道具や技法が用意されていると、つい目移りしてしまいがち。しかし人間にはできることしかできませんし、一度に取りかかれるのは1つの行為だけです。
そこで、いろいろ手を出すことは長期的な目標としてとっておき、まずはなにか1つテーマを選び、そのためのノートをつくってみることを著者は勧めています。
テーマの選択は、「今の自分が興味を持っていること」」にするのがポイントです。気持ち的にアクティブになっているもの、すでにいろいろ情報を集めたり、関心を持って眺めているものです。
そうした対象を選んでおけば、無理やり自分を鼓舞する必要はありません。「何となく英語を勉強したいと思っているから、何となくノートを作ろう」くらいの気持ちでは、さすがに継続は難しいでしょう。(193ページより)
仕事のやり方を変えたいと思っているなら、まず取りかかるべきは作業記録。映画鑑賞や読書が趣味なら、そのためのノートから。自分の生き方や考えを残しておきたいなら、日記やアイデアノートから始めてみるーー。そのようにワンテーマから始め、慣れてきたら徐々に違ったテーマに手を広げていくわけです。
ただし、注意すべき点もあるようです。最初にテーマを決めたからといって、歯を食いしばってそのノートを続ける必要はないということ。「これなら続けられる」と思ったテーマだったとしても、予想以上に早く熱が冷めてしまうことだって考えられるのです。
そんなときには自分を責めてしまいがちですが、実際には多くの人が似た状態になっているもの。つまりは単に選ぶべきテーマを誤っただけで、自分がダメ人間だということではないのです。
ですので、続かなくなったらその時点でやめてしまって問題ありません。あらためてその時点で「いま興味があるテーマ」を選び直してノートを再開してみてください。そうしているうちに、少しずつ「ノートを書く」という行為そのものに慣れていきます。(194〜195ページより)
興味あるテーマが思いつかない場合は、「自分に興味のあることはなんだろう?」ということをテーマにしてノートをつくってみるといいそうです。そこに気になったことを書き溜めていき、自分の関心事を探っていくわけです。(193ページより)
メモとノートの役割は違う
Q「メモとノートの違いって何ですか」
A「短期がメモ、長期がノートです」
(210ページより)
メモもノートも書き留めるものですが、運用には違いがあるそうです。メモは短期間で処理される情報を指し、ノートは長期間保管される情報を指すというのです。
たとえば、買い物が終わったら役割を終える「買い物リスト」はメモ。一方、家計簿として長期的に保存される情報である「買い物の出費記録」はノートになるわけです。
もちろんメモ帳にノートを書くこともできれば、ノートブックにメモを書くこともできるでしょう。
とはいえ多くのメモ帳は紙の材質がペラペラで長期的な保存には向いておらず、たいていのノートブックはしっかり綴じられて紙が散逸しにくい構造になっているもの。つまり情報の利用形態に合わせた形状になっているため、その形状に合わせるように使えば違和感は大きくならないそうです。
むしろ重要なのは、情報の利用期間に目を向けることです。その情報が短期で処理されるならば、書き込みの詳細は最低限で構いません。
一方で、長期での利用が想定されるなら、可能な限り文脈を添えて詳細度を上げておく必要があります。
そうしないと、後から見た人間(自分を含む)がその内容を理解できなくなるからです。その意味で、一番まずいのがメモを書くようにノートを書いてしまうことです。その点は注意しておきましょう。(211ページより)
いずれにせよ、こうして考えてみるとノートの利用範囲は意外に広そうです。(210ページより)
多様性が重要な意味を持つ現代においては、ノートの活用法も均一的ではなく、個別にカスタマイズ可能なものであるべきなのではないか。著者はそう述べています。
たしかに自分にフィットした活用法を確立できれば、ビジネスはもちろんのことライフスタイル全般にもよい影響が出てくるかもしれません。
Source: イースト・プレス