『精神科医が教える 幸せの授業』
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自己肯定感に縛られるな!精神科医が教える「実用のための幸福術」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
すっかりおなじみかと思いますが、『精神科医が教える 幸せの授業 お金・仕事・人間関係・健康 すべてうまくいく』(樺沢紫苑 著、飛鳥新社)の著者は、30年以上にわたってメンタル疾患を抱える患者さんたちと接してきた精神科医。
そうした日々の活動を通じ、「『幸せになりたい』と思ってがんばった結果、不幸せになっている人がとても多い」と実感しているのだそうです。そこで本書では、「幸せに向き合って、それを手に入れる方法」を伝えようとしているわけです。
などと聞くと、なんとなく難しそうにも感じられるかもしれません。しかし見落とすべきでないのは、著者が「幸せは、誰にでも同じやり方で確実に手に入れられる」のだと断言している点。
著者が見つけた「幸せになる方法」はあいまいな「幸福論」ではなく、現実的で具体的なメソッド。精神医学や脳科学に基づいた、誰にでも実践できる「実用のための幸福術」だというのです。
しかも幸せについての基本的な考え方はもちろんのこと、「健康」から「人間関係」まで、さまざまなテーマを設定したうえで幸せになる方法を考察しているところがポイント。そのため読者は、いまの自分に見合った幸せまでの道筋を無理なく見つけ出すことができるわけです。
きょうはそれらのテーマについての考え方がつづられた、「Note」という名のエッセイ部分に焦点を当ててみたいと思います。
職場の居心地は「確認」で改善
幸せな人生を送るためには、心地よい人間関係を整えることが不可欠。しかし現実的には、避けて通れないつきあいも存在するものです。
たとえばその代表格が、職場における人間関係。だとすれば、職場での心地よいコミュニケーションを実現するためにはどうすればいいのでしょうか?
職場の人間関係をスムーズにするためになにより必要なのは、「自分と相手の価値観が違う」点に気づくこと。いうまでもなく、上司と部下とでは見えているものも、考えていることも違います。したがって、そんな両者が自分だけの価値観で物事を判断していれば、うまくいかなくなるのは当たり前なのです。
もしあなたが部下なら、上司から何か指示をされたときに「それは〇〇ということですか?」と、具体的な内容をその場で確認することを心がけてみましょう。
たとえば「資料は10ページくらいのものでいいですか?」と聞けば「いや、1枚にまとめて」「もっと詳しくして」など、何かしら指示があるはずです。
あなたが上司なら、相手の理解をその場で確認してあげると親切ですね。(64ページより)
コミュニケーションの行き違いを防ぐことで、時間や作業の無駄を省くことが可能になります。しかし、空回りのがんばりは、どちらにとってもマイナスになってしまいます。
だからこそお互いに「確認」を心がけ、スムーズなコミュニケーションを実現させる必要があるのです。(64ページより)
友人関係は「仮面」で演じる
本来、「友人関係」は自由なものであるはず。ところが、なかには半強制的につながっているケースもあるものです。
たとえばいい例が、学生時代のサークル仲間や新卒時代の同期など、集団の一員としてのつきあい。あるいは、子育てを通じての「パパ友・ママ友」などもそれにあたるでしょう。
このような、すごく親しいわけではないけれど「自分だけ抜けるのもちょっとなぁ」と感じる友人関係は、「修行」と割り切って淡々と付き合うことをおすすめします。
仮面を着けてその立場を「演じる」くらいのつもりでいると気持ちが楽です。期待せず、踏み込みすぎず、仕事と同じように淡々とフラットに付き合いましょう。
万が一、輪から外されてしまっても人生が終わるわけではありません。強いストレスを感じるくらいなら、距離をおくのも必要なことです。(90ページより)
もちろん、輪から外され溶け込めなくなったとしたら、それなりにストレスがかかるかもしれません。
とはいえ重要なのは、上記の「人生が終わるわけではありません」という部分。たしかにそのとおりですし、無駄な居心地の悪さを感じ続けながら過ごすよりは、スパッと割り切ったほうがいいのです。
ただし、所属するコミュニティが1つしかない場合は、「仲間外れにされたくない」という気持ちが強くなり、ストレスが肥大化してしまう可能性も否定できません。そこで、家庭、職場/学校などの他にも、趣味のサークルなどの“第3のコミュニティ”をいくつか持っておくことを著者は勧めています。それだけのことでも、精神的にはかなり楽になるはずだからです。(90ページより)
「自己肯定感の高い人」は存在しない
「自己肯定感が低いせいでうまくいかない」というような声を耳にする機会は、決して少なくありません。それどころか、自分自身がそう感じ、悩んでいるというケースもあることでしょう。
自己肯定感は、低いよりも高いほうがいいのは事実。自己肯定感が高い人ほど幸福を感じやすく、低い人は感じにくいのですから。しかし著者によれば、自己肯定感は簡単に高められるものでもあるようです。
なぜなら、自己肯定感は「性格」とは違うから。
読んで字のごとく自己肯定「感」というぐらいですから、あくまで主観的で感覚的なものであり、その時々の「状態」にすぎないと私は考えています。
なぜなら、試験に合格したとか、プロジェクトの結果を褒められたなどの「出来事」で、「心の状態」は簡単に変わるからです。
つまり、自己肯定感とは絶対的なものではなく、折に触れて高くなったり低くなったりする、流動的なもの。もとから「高い人」「低い人」など存在しないのです。(118ページより)
実際のところ、「無理」「できない」などのネガティブなことばを使わず、「自分にはできる」とポジティブなことばを使うだけでも自己肯定感は簡単に高められるそう。
自己肯定感とはあくまで“行動した結果”として感じるものなので、経験によって簡単に上書きできるということ。だから、「自己肯定感の高さ・低さ」などにとらわれすぎる必要はないのです。(118ページより)
メインの本文パートは対話形式で解説が進められていくので、会話を楽しんでいるような気持ちで知識を得ることができるはず。さまざまな意味で「より幸せになりたい」と感じているのなら、参考にしてみる価値はありそうです。
Source: 飛鳥新社