<書評>『板ばさみのロシア人 「プーチン時代」に生きる狡知(こうち)と悲劇』ジョシュア・ヤッファ 著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

板ばさみのロシア人

『板ばさみのロシア人』

著者
ジョシュア・ヤッファ [著]/長﨑 泰裕 [訳]
出版社
白水社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784560093801
発売日
2023/10/31
価格
5,060円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『板ばさみのロシア人 「プーチン時代」に生きる狡知(こうち)と悲劇』ジョシュア・ヤッファ 著

[レビュアー] 藤井耕一郎(ライター)

◆「ずる賢い人間」の葛藤

 好奇心旺盛な「ニューヨーカー」誌のモスクワ特派員が、さまざまな立場のロシア人に取材したルポ。世界を驚かせたウクライナ侵攻前に書かれた作品だが、プーチン政権下のロシア人の思考がよくわかるように解説され、ジョージ・オーウェル賞の政治評論部門を受賞した。

 オーウェルの小説『1984年』は「二重思考」と呼ぶ論理の矛盾した標語で全体主義国家を諷刺(ふうし)した。モデルになった旧ソ連は1980年代末から崩壊が始まる。本書はロシアがその後も個人に権力を集中する権威主義国家であり続けた推移を報告する。では、具体的に何が変わり、何が変わらなかったのだろうか。

 大統領は選挙で選ばれ、暮らしも豊かになった。が、選挙は統治を正当化することに目的が置かれ、西ヨーロッパのような民主主義国家にはならなかった。ロシア人は国家の圧力と自分の志の板ばさみにされた。これが自分にとって有利な選択を最優先する新たな思考を生み、変節しても安定を求める「ずる賢い人間」を生き延びさせたと結論する。

(長﨑泰裕訳 白水社・5060円)

米コロンビア大でジャーナリズムを学ぶ。本書が初の著書。

◆もう1冊

『諜報(ちょうほう)国家ロシア ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで』保坂三四郎著(中公新書)

中日新聞 東京新聞
2024年1月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク