『着ない服を捨てたら「すぐやる人」になれた』
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超なまけものでもできる生活習慣を変える秘策:朝と夜にやってはいけないこと
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
幼稚園の時は、2年間ピアノ教室に通い、バイエルで終わってしまった。練習の時はいつも漫画を読んでいた記憶がある。小学校の時は、問題集を解くのが面倒くさくて解答を書き写すだけだった。中学の時は、家庭教師が来ると居留守を使ったこともある。高校の時は、深夜までパソコンゲームにいそしみ、授業中は居眠りばかり。大学生になると、今度は明け方までスマホをいじって自主休講、試験の前夜に一夜漬けをくり返す日々。
(「PROLOGUE すべては、これじゃ人生が台無しになるという危機感からはじまった」より)
『着ない服を捨てたら「すぐやる人」になれた』(ジイ(超なまけ者) 著、オ・ヨンア 訳、飛鳥新社)の著者は、自身の過去をこのように振り返っています。以後はニートになって生活パターンがさらに乱れ、人生がそのまま終わってしまうような恐ろしさを感じていたのだとか。
ところがいまでは本を書き、もう自己嫌悪に陥るようなこともなくなったそう。大学の編入試験に合格し、希望していた専攻の勉強をしているのだというのですからたいしたものです。もしもそれが事実なら、「わずか数年の間になにが起きたのか?」ということを知りたいところ。
そこで本書の出番です。
ここに込められたメッセージは、さまざまな問題を生み出す「先送り」「なんでも適当」「やってるふりだけ」といった行動パターンを改善するために役立ってくれることでしょう。
きょうはLEVEL2「目覚めてから眠るまでの生活パターンを変える」のなかから、起きた直後と寝る前に心がけておくべきポイントを抜き出してみたいと思います。
起きた直後が1日の気分を左右する
その時間をどう過ごすかによって、1日をどれくらいアクティブに過ごせるかが決まるのですから、1日のはじまりはとても重要。そういう意味でも、まずなによりも先にスマートフォンに気をつけるべきだと著者は強調しています。
枕元にスマホがあると、アラームを切って二度寝してしまったり、どうでもいいようなメールやメッセージなどを眺めることで時間を浪費したりする可能性があるからです。
その結果、ぼんやりした意識で1日をはじめるか、あわてて家を出る準備をするかのどちらかになるはず。すると、なにかがこじれ、1日の密度が一気に低くなるわけです。
そこで、著者が「おすすめ事項」ではなく「必須事項」として挙げている4点を確認してみましょう。
① 目覚まし時計を使う
② スマホを手の届かないところに置く
③ 起床時間前まではスマホにロックをかけておく
④ 起きてすぐに生産的なルーティンをする
(55ページより)
どれも基本的には当たり前のことですが、当たり前だからこそ重要だともいえるはず。また、とくに④が重要な意味を持つようです。
たとえば、米海軍大将のウェリアム・マクレイヴンの「ベッドメイキングからはじめなさい」というスピーチに感銘を受け、毎朝の最初のルーティンとしてベッドメイキングを始めたという著者は、絶大な効果を実感しているといいます。
つまり、なにか自分にとって生産的なことで1日をスタートさせるべきだということ。なお、それに該当するルーティンとは「やりたくない」とまでは思わない程度に簡単で、「なにか前向き」なことを指すそうです。
たしかに、どれだけ人の役に立つことであっても面倒くさいと感じることは長続きしないもの。そこで、その日の予定確認とか、換気して外の空気を吸うとか、ストレッチや体操、あるいはミニ瞑想をしてみるなど、自分に続けられそうなことをルーティンにしてみるといいようです。そうすればおのずと、モチベーションも高まっていくことでしょう。(54ページより)
就寝時間が翌日の過ごし方を決める
どうしても避けられない事情がない限りは、必ず深夜1時前に寝るようにしてください。
なぜなら深夜1時〜5時という時間帯は、外は真っ暗でわたしたちの判断力や理性もにぶってきます。
どうでもいいことに没頭し、どうでもいいことが重要になって、すぐには行動に移せない無駄なスケジュールに時間を使ってしまうようになります。
夜は長いので、非生産的で無意味な時間を過ごしてしまっても罪悪感がありません。(66ページより)
つまり深夜帯は総体的に時間の密度が低く、自分にとってネガティブな時間を過ごす確率が高いということ。著者によれば、非効率的で、ネガティブで、どうでもいい考えや行動の97%は深夜に発生するそうです。
たしかに夜12時を過ぎると、仕事の効率も急速に落ちていくもの。そればかりか、その人のスケジュールを終わらせようとしていたつもりが、スマホやパソコン、テレビ、ゲーム、夜食などにはまってしまう危険もあります。「夜12時まで」という“最終防御ライン”がないと、すべきことを先延ばしすることになってしまうわけです。
したがって、夜12時になったらきっぱり手を離すべき。そう主張する著者は、以下の点も意識しておくことを勧めています。
① 夜12時以降、スマホやパソコンを使わない
② スマホは手の届かないところに置いて寝る
③ 眠る前にスマホにロックをかけておく
(69ページより)
興味深いのは、上述した「朝の必須事項」とかぶっていること。しかしそれは、こうした「当たり前のこと」を習慣化することがいかに重要であるかということを意味するのではないでしょうか?
事実、スマホの明るい光が脳を刺激してしまい、睡眠を妨げるというのは有名な話でもあります。しかし、だからといって早く寝ればいいということでもなさそうです。
夜の7時〜8時ごろに寝てしまうと、夜遅くの11時〜1時ごろにトイレに行きたくなったり、喉が渇いたり、お腹が空いたりして、中途半端に目を覚ます可能性がめちゃくちゃ高いんです。(71ページより)
共感できる方もいらっしゃるのでは? 極端に早過ぎたり遅過ぎたりせず、でも、きちんと眠る習慣を身につけることが大切なのでしょう。(66ページより)
「なまけぐせと無気力の沼から抜け出したい」というような思いは、多かれ少なかれ誰のなかにもあるものではないでしょうか? しかし本書を参考にしながら生活パターンを改善していけば、少しずつ状況をしていけるかもしれません。
Source: 飛鳥新社