『わたしたちの親不孝介護 「親孝行の呪い」から自由になろう』川内潤/日経ビジネス編集部著

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わたしたちの親不孝介護 「親孝行の呪い」から自由になろう

『わたしたちの親不孝介護 「親孝行の呪い」から自由になろう』

著者
川内 潤 [著]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784296203482
発売日
2023/11/25
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『わたしたちの親不孝介護 「親孝行の呪い」から自由になろう』川内潤/日経ビジネス編集部著

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

助け借り仕事両立 語る

 書名にある「親不孝介護」という言葉を見た時、違和感を覚える人もいるだろう。

 自分や家族の手で介護することが親孝行であり、親不孝介護とは他人に介護を委ねるように勧めることではないかと考え、この本を手に取ることさえしない人もいるかもしれない。だが親のそばにいて自分たちで介護をする=親孝行という根強くある「常識」こそが、家族にとって介護をつらいものとし、時には介護する側を離職にまで追い込みかねない原因だ。この「常識」を捨て、親との間に適切な距離をとって負担を軽減することが、かえって親のためにもなり、仕事との両立が可能な介護を実現させると著者は説く。具体的には、地域の介護相談窓口である地域包括支援センター、ケアマネージャーやヘルパーなど専門家の助けを借りて介護をマネージすることが「親孝行介護」に代わる「親不孝介護」だという。本書でいう「親不孝」とは決して介護を人任せにすることではないのだ。

 本書は編集者と介護コンサルタントが2022年に刊行した『親不孝介護』(日経BP)の続編である。編集者は遠隔地に住む一人暮らしの母親のケアにあたって、さまざまな支援の力を借りながら仕事との両立を図り、「親不孝介護」を実践した経験がある。本の中では上記の2人と、企業で介護支援の最前線にいる人事担当者、芸能人、医師、作家ら多彩な顔ぶれが対談し、親との別れ、医療や介護の現場で思ったことなどを語る。実際に体験し感じた内容だけに、いろいろな気づきを読者にもたらすだろう。

 介護者に対して全てを抱えようとせず、人に相談し協力を求めるというマインドセットが何より重要であると本書は教えてくれる。また企業の人事担当者に対しても自社の介護支援の考え方や介護相談のあり方に関する大切な視点を提供する。一見軽いタッチの本に見えるが、介護の「リアル」に迫る深い内容が語られており、介護に関わる人にとって必読の一冊と思う。(日経BP、1760円)

読売新聞
2024年1月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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