当たれば何千万、もしくは億単位にも ベストセラー作家が語った、成功する人と失敗する人

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作家になる方法

『作家になる方法』

著者
千田琢哉 [著]
出版社
あさ出版
ISBN
9784866676654
発売日
2024/02/07
価格
2,750円(税込)

当たれば何千万、もしくは億単位にも ベストセラー作家が語った、成功する人と失敗する人

[文] あさ出版


文筆家・千田琢哉さん

コンサルティング会社で1万人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって得た事実と知恵を活かし、タブーを恐れずに執筆活動を行う千田琢哉さん。これまでに200超の著作を執筆し、累計発行部数350万部を超える千田さんが、新刊『作家になる方法』を刊行した。作家志望者に向けて忖度なしで書かれた厳しくも愛情に溢れた指南書を手掛けた千田さんに、作家に向いている人や作家の実態について話を聞いた。

――大学時代に中谷彰宏さんの『昨日までの自分に別れを告げる』と出会い、自分も作家になれると感じたとのことですが、そこからどのようなことに取り組んでいき作家デビューされたのでしょうか。ビジネス書・自己啓発書のジャンルを選ばれた理由とともに教えてください。

ジャンル選びに関してはハッキリしています。最初に出会った本がビジネス書・自己啓発書だったからです。「人生はたった一行で変わる」と一点の曇りもなく直感しました。自分もこういう本を書きたい。それも1冊ではなくずっと書き続けたい。そう強く思いました。ひょっとしたら将来小説を書くことがあるかもしれないけど、まずはビジネス書・自己啓発書だろうと。そのためにビジネスの現場で大勢の人と対話しようと思いました。完全にネタ集めです。最初の就職先に好悪は無関係でしたね。とりあえず万人受けする大企業に入っておきながら本を出しやすい会社を見つけて、それから転職すればいいだろうと。就職した保険会社では法人向けの仕事をする部署に配属してもらいたいという希望がそのまま通ってとにかく貪欲に会社経営者たちと会いまくりました。保険の仕事などそっちのけで寸暇を惜しんでひたすらエグゼクティブたちとの対話を楽しんでいましたね。そのうち日本で一番本を出しやすい会社を見つけました。それがたまたま経営コンサルティング会社だったのです。

――「社会不適合者こそ、作家に向いている」と書かれています。いわゆる「ダメ人間」ほど作家向きなのですか。

「ダメ人間」というわけではありませんが放っておくと浮いてしまうような人が作家には向いていると思います。自分としては普通にやっているつもりなのに気がついたら浮いちゃう人です。狙って奇抜になるのではなく自然にはみ出ちゃう人ですね。決して能力が低いわけではありません。チームプレイは苦手だけど個人プレイは得意だという人が作家には向いていますよ。それは昨今のインターネット上の成功者たちも顕著ですよね。従来のサラリーマン社会では野球やサッカーみたいなチームプレイ経験者が好まれる傾向にありましたが、今は必ずしもそうではなくなってきました。陸上・テニス・卓球・水泳・格闘技、そして筋トレ系など個の実力がそのままモノを言う個人競技の経験者で成功する人が増えています。作家で成功する人も独特の世界観を書ける人です。

――作家業でやはり気になるのは、収入です。「夢の印税生活」という言葉もありますが、そもそも作家とは専業で生活していけるほど稼げる仕事なのでしょうか。兼業作家でいるほうが無難なのでしょうか。

結論から言うと実力次第です。作家の実力とは滲み出るような独特の世界観をどれだけ文章で表現できるか、ですね。いくら大手出版社の新人賞を受賞しても芥川賞を受賞しても独特の世界観が薄い人は専業作家にはなれません。これはジャンルに関係ありませんね。ビジネス書でも純文学でもエンタメでもラノベでも官能小説でも漫画でもまだ何ページも読まないうちにフワーッと独特の世界観に包み込んでくれるような文章を書ける作家は必ず一定のファンが付きます。これは売れた作家であれば全員首肯する事実ですが作家は儲かります。時給ではなく出来高制なので1冊当たれば何千万円や場合によっては億単位にもなりますから「ああ、自分は作家として成功したんだなー」ってわかりますよ。こんな本音は誰も教えてくれないと思いますが。最初は憧れの作家の真似から入るのもいいですが、必ずどこかで自分“ならでは”の世界観を披露することです。それがプロですから。

――専業作家として生活していくための下限の著作数と、それを実現するためのポイントについてお考えをうかがいたいです。

もしミリオンセラーを出せるなら数冊出せばいいですがそれは非現実的ですよね。ですからとりあえず50冊を目標にしてみてはどうでしょう。50冊出すのだってかなり大変ですがミリオンセラーを出すよりは現実的です。ミリオンセラーは実力だけではなく時の運もかなり影響しますが著作数50冊なら実力さえあれば何とかなりますから。著作数50冊を突破するポイントは早めにヒット作を叩き出しておくことです。一番やる気に満ちている第1作目では絶対に増刷をかけておきたいですね。作家にとっては売れる本を出すことが最高のマーケティングです。1万部売れれば1社から、3万部売れれば3社から、10万部売れれば10社から声がかかると思ってください。


専業作家として生活していくための下限の著作数とは

――この世界に入られる前に、さまざまな作家の業界にまつわるエッセイなどを読まれたと書かれています。実際に作家になって初めて知った業界の「裏側」についてのエピソードがあれば教えていただけないでしょうか。

特にビジネス書・自己啓発書では著者が自分で書いていない本が多いですね。大袈裟ではなく約9割の著者がインタビューを受けてライターに書いてもらっていたり、中にはインタビューすら受けずにSNS上で配信したコンテンツをゴーストライターがまとめていたりしています。さらに言っておくと私を含む数人の著者の本をそのままゴーストライターに手渡して、これらをまとめて某カリスマの名前で本にしちゃえという出版社もあります。こういうのは業界内ではすぐに回ってきます。出版業界は狭いですから。でも10年や20年単位で見るとそういうカリスマは流行が過ぎて本を出せなくなりますし、悲惨な人生を送っているものです。それは私が大学時代にまだ1冊も本を出せていない頃から気づいていました。「うわー、この本絶対自分で書いていないな。○○さんと○○さんの本に書いてあったのをそのまま載せてあるだけじゃん」という著者は全員見事に消えていましたね。これは編集者たちも気づいているでしょうが作家はやっぱり自分で書かないと本の熱量や怨念が小さくなります。これから確実に台頭するであろうAI作家に唯一生身の作家が勝てるとすれば、それは熱量と怨念だと私は思います。

――それこそが、作家の存在意義なのですね。

間違いなく言えるのはもう一度生まれ変わっても私は作家になりたいということです。そのくらい私はこの仕事を愛しています。だからこそ作家志望者という同志に向けてあえてお伝えしておかなければならないことがあります。作家に限りませんが仕事は売れなければ楽しくありません。どんなに高尚な仕事でも、どんなに社会的に地位が高い職業でも、やっぱり売れなければちっとも楽しくありません。貧乏ではいけないのです。私にしても全然稼げなかったらきっと作家を諦めていました。仮に専業作家にはなれなくても仕事をちゃんとして経済的には貧しくならないことが大切です。会社勤めをしながらだとかお医者さんをしながら作家として活躍しておられる方もいらっしゃいます。とても大変だと思いますがこの仕事にはその価値があります。「人生はたった一行で変わる」という事実をどこかの誰かに自分で書いた本を通して伝えられるというのはロマンがある仕事ですよ。

あさ出版
2024年2月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

あさ出版

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