【話題の本】『奥州仁義』井原忠政著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

三河雑兵心得(13) 奥州仁義

『三河雑兵心得(13) 奥州仁義』

著者
井原忠政 [著]
出版社
双葉社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784575671834
発売日
2023/12/13
価格
726円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【話題の本】『奥州仁義』井原忠政著

[レビュアー] 産経新聞社

■30代も読む時代小説

戦国時代を舞台にした足軽の出世物語「三河雑兵心得」シリーズが、最新刊の13巻『奥州仁義』で累計120万部を突破した。文庫書き下ろし。双葉社によると、時代小説のメイン読者である50~70代男性に加え、30~40代男性にも読まれている。

1巻は桶狭間の戦いから3年。けんかの弾みで人を死なせ、村を出た17歳の農民・茂兵衛は松平家康の家来に仕え、やがて家康の足軽に-。

戦国の出世といえば下克上。豊臣秀吉や北条早雲、斎藤道三ら名立たる武将の成り上がりが王道だろう。一方、茂兵衛は秀吉の小田原攻め後の最新刊で「古株の足軽大将」級の鉄砲百人組頭。手柄はそこそこ、戦死者が少ないのが身上だけに、サラリーマンのように地道な昇進ぶり。

双葉社では、若い層に支持される理由を「3巻で足軽小頭、会社でいえば係長くらいになって以降は中間管理職といえる立場。家康に毎度、困難な任務をむちゃぶりされ、愚痴を言いながらも必死にこなす姿が身につまされるという声も」とみる。

最新刊では謀反人を掃討するという秀吉の号令で出陣するが、家康からは相反する命令を受けるなど、サラリーマンのような悲哀がにじむ。コミック並みの手ごろな価格も、若い世代には魅力かも。(双葉文庫・726円)

寺田理恵

産経新聞
2024年1月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク