競争力ランキング1位の国を分析した「デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか」に“絶望”

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デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか

『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』

著者
針貝 有佳 [著]
出版社
PHP研究所
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784569855974
発売日
2023/11/17
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

競争力世界一の国 デンマークを解剖

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 毎年発表の国別競争力ランキングで2022年、23年と連続でトップに立ったのがデンマーク。34位→35位に沈む安く美しい国とは月とスッポンで、それは経済やデジタル化、国民の幸福その他いろいろの指標でも同様です。

 この彼我の差をつくづく実感できるのが『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』。かの国の労働政策を研究して移り住んだ針貝有佳の初の単著で、成功例から導かれた、暮らしと仕事を楽にする技術が山盛りなのが第一の読みどころだとして、もひとつイイのは、そのライフハック術のベースである彼らの暮らしぶり、働きぶり、さらにその根にある生活観、仕事観が、取材や体験をもとに豊富に描かれ、導き出されていること。

 考えるヒント満載ゆえページを繰るのが快感になってくるんですが、この快感、実はかなり自虐的。デンマークの成功の理由の大半が、日の丸国家ならではの精神&実践の真逆だと痛感させられ、絶望までできるんでね。仕事か暮らしか、社会か個人か、男か女かなんていう、この国では片方優先の二者択一になってきたアレとコレを両立させ、それによって進化しようと智恵を絞りきる点が大違い。

 ただ、そのために新しきを採り古きを捨てることを厭わないアチラの前のめりさには、コチラの維新や戦後を思わせるところもあるから、ニッポンだってまた死んだ気になってやりゃ……なんて一縷の望みも湧いてこないわけじゃなく。

新潮社 週刊新潮
2024年2月8日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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