『AIガバナンス入門』羽深宏樹著

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AIガバナンス入門

『AIガバナンス入門』

著者
羽深 宏樹 [著]
出版社
早川書房
ジャンル
総記/情報科学
ISBN
9784153400177
発売日
2023/12/19
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『AIガバナンス入門』羽深宏樹著

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

 AIは、出力結果の検証が難しいことに加え、社会への影響力が極めて大きいというその特質からリスクも大きい。生成AIの登場によりリスクは一段と大きく複雑になった。AIガバナンスが喫緊の課題である所(ゆ)以(えん)だ。だが著者はその取り組みは容易ではないという。AIの能力向上のスピードは極めて速くそのリスク管理には航海を続けながら船を作り直すに似た作業が要求されるからだ。また管理強化に傾きすぎれば開発を阻害しかねないことも難しい問題である。

 今年のダボス会議の主要なテーマはAIだった。規制が必要ということでは意見は一致したが、具体論については当局と企業の間には温度差があったと報じられている。今後リスク管理を重視する当局と、自由な開発を望む企業との間でせめぎ合いが起きるだろう。その動向如(い)何(かん)で政治や我々のプライバシー、雇用、ビジネス等に大きな影響が生じる。どのような立場であれ我々はAIのあり方を自分ごととして考えなければならないと著者は説く。本書はわかりやすくAIガバナンスの全体像を示す。入門には好適な一冊だ。(ハヤカワ新書、1100円)

読売新聞
2024年2月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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