文豪・夏目漱石の孫に当たる著者の夏目家に関するエッセーを一冊にまとめた。漱石の長女である母・筆子らから聞いた話などがつづられている。
母の思い出の中では「余りにも惨澹(さんたん)たるもの」だった漱石だが、「案外もっとも漱石好みの女性」は母だったとみる。祖母で漱石の妻の鏡子は「悪妻として名高いが、これほどのあっぱれな良妻はいない」という。父で漱石最晩年の弟子だった作家・松岡譲。漱石の弟子たち…。著者の夫で作家の半藤一利が提案した企画だけあって、家族らの声や姿が浮かび上がり、味わい深く読み応えがある。(PHP研究所・1870円)
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2024年4月7日 掲載
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