『日本の図像 刺青』濱田信義編著

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日本の図像 刺青

『日本の図像 刺青』

著者
編集室 青人社 [著]/濱田信義 [編集]/谷平理映子(SPICE design) [著]
出版社
パイ インターナショナル
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784756258236
発売日
2023/12/22
価格
3,080円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『日本の図像 刺青』濱田信義編著

[レビュアー] 小池寿子(美術史家・国学院大教授)

 壮絶な勇肌(いさみはだ)が度肝を抜く。刺青(いれずみ)を描いた浮世絵のオールカラーの希有(けう)なバイリンガル本である。

 刺青はタトゥーと言われ、いまや世界的に人気を誇るアートだ。しかし、その起源と歴史を図像と共に鮮明にした一般書はない。刺青は肌に描くのではなく、肌を鋭利な器具で彫り、色材を皮膚に定着させる彫物。端緒は古代に遡るが、日本では江戸後期に歌川国芳の浮世絵でブレークし、明治近代化以降、裸体風俗と等しく禁忌された。

 本書は、第1章「勇肌の美」歌川派の浮世絵、第2章「刺青の文様」の2部からなる。序文の執筆者谷川渥は、皮膚論の研究で刺青に着目。文化史的位置づけを行い、とくに江戸期隆盛の背景と展開、特質を仔細(しさい)かつ簡明に論じた刺激的な論考である。貴重な刺青論が英訳され、図像と共に理解が深まることを期待する。(パイ インターナショナル、3080円)

読売新聞
2024年4月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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