名作『リング』をアップデート 恐怖のパンデミックが広がる

レビュー

8
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ずうのめ人形

『ずうのめ人形』

著者
澤村伊智 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041043554
発売日
2016/07/26
価格
1,782円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

名作『リング』をアップデート 恐怖のパンデミックが広がる

[レビュアー] 石井千湖(書評家)

 第二十二回日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智のデビュー作『ぼぎわんが、来る』は、得体のしれない化け物「ぼぎわん」を生み出し、選考委員が揃って絶賛したこと、『リング』の貞子が推薦コメントを寄せたことで話題になった。受賞後第一作の『ずうのめ人形』には、「サダコ」と呼ばれる少女が登場する。ジャパニーズ・ホラーの名作『リング』が描いた恐怖を、愛と敬意を込めてアップデートした作品だ。

 オカルト雑誌でアルバイトをしている藤間は、編集部に出入りしている学生の岩田と一緒に、突然音信不通になったライター、湯水の家を訪ねる。彼らが発見したのは、両方の目玉がない死体と、黒い染みがついた手書き原稿。その原稿を読み始めた藤間の周辺に、真っ黒な振り袖を着て赤い糸で顔をぐるぐる巻きにした人形が現れる。

 謎めいた原稿の語り手は、ホラーが大好きな中学生・里穂だ。「ずうのめ人形」は、『リング』が映画化された一九九八年、彼女が通う図書館の交流ノートに書かれた都市伝説。この話を読むと呪いが発動する。藤間は湯水の仕事を引き継いだ野崎と、野崎の婚約者で霊能力者でもある真琴に対策を相談するが……。

 野崎によれば、都市伝説は語られる内容ではなく、伝わり広がること自体が恐怖を引き起こす。〈より広く拡散されるように進化した怖い話〉だという。『リング』の場合、ビデオテープによって拡散させるところが画期的だった。本書は今時珍しい手書きの原稿用紙やノート。なぜ呪いのメディアとして、そんなアナログなものを選んだのだろう。読みながら不思議だったのだが、結末を際立たせるためだったのかと腑に落ちた。呪いから逃れる方法の謎解きに衝撃を受け、恐怖のパンデミックの予感に肌が粟立つ。感染爆発のトリガーになるのは、誰かに話を聞いてもらいたい人間の孤独。現代ならではの恐ろしさを次の読者に伝え、拡げたい。

新潮社 週刊新潮
2016年9月1日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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