明文堂書店石川松任店「身近だが、特殊な環境である《学校》の闇を容赦なく描く力作」【書店員レビュー】

レビュー

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一○一教室

『一○一教室』

著者
似鳥 鶏 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784309025032
発売日
2016/10/27
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
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明文堂書店石川松任店「身近だが、特殊な環境である《学校》の闇を容赦なく描く力作」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

子供の非行や家庭内暴力、引きこもりが治る、と口コミとSNSで評判の《恭心学園》。著名な教育者である松田美昭によってつくられたその学園の生徒である藤本英人が心臓麻痺で死んだ。親戚である大学院生の《僕》は、葬式の状況を不審に思い、従妹の篠田沙雪と共に学園を探っていく。
学園長である松田美昭の独善的な教育論(言葉の一部だけを切り取ると立派に聞こえるのが、不気味ですね。全体を通して見ると、かなり歪な印象を受けます)と体罰という名の暴力が横行する学園の日常には、憤りを覚えた。過激な体罰を描くことで、徹底的に体罰に「No!」を突き付け、そして同時にいじめや親子の問題にも踏み込む力作だ。教育の問題に対する切実な願いにふれたような気がして、他人事にしてはいけないな、と強く感じた。
ただつらく苦しい物語で終わるわけではなく、後半の疾走感のある展開や希望を感じさせてくれるところも魅力的だ。
身近だが、特殊な環境である《学校》の闇を容赦なく描く。青春の影と向かい合った作品と言えるかもしれない。

トーハン e-hon
2016年11月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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