佐藤優が、人気コミック『キングダム』から盗んだ“処世術”とは?

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累計3000万部超えの人気コミック『キングダム』。インテリジェンスの巨人・佐藤優氏は、『キングダム』を読んだとき「これは終わりなき現代の話だ」と考えたという。作中で描かれているのは、確かに春秋戦国時代の中国ではある。しかし、そこで繰り広げられているサバイバルは、まさしく現代日本におけるそれであり、残酷な環境下の職場や、世の中に通じるのだと。ここでは、佐藤優 氏が『キングダム』を題材に、現代人のための実践的処世術を記した新書『武器を磨け』から、仕事の引き際について紹介しよう。

「逃げ時」を知れ

 世の中では、他者に対して「逃げずに頑張れ」とは言うが「逃げて頑張れ」とは言わない。その人のキャパシティを超えて負荷がかかっている状態で、頑張れとさらに負荷をかけ続けたらどうなるか。つぶれるに決まっている。

 自分のキャパシティというのは他人が推し量ることはできない。自分で本当に無理だと感じたらその場から身を引き、「逃げる」ことも必要だ。これは何もおかしなことでも恥ずかしいことでもない。動物全般、本能的にそうするのである。

 たとえば私が、飼っている猫と遊んでいると最初は喜んでいる。こちらがそれで調子に乗ってもっと激しい遊びをしてやると、突然ガブッと嚙みついて逃げていったりする。これもある種のキャパシティを超えた状態だろう。

 私自身も比較的ストレスやプレッシャー耐性は強いほうだが、おそらく自然に自分のキャパシティを超えそうだと感じたら、そこからスッと身を引く術を身に付けているからだ。

 そのときに周りを気にしてはいけない。あいつはまだ頑張っているのに、自分だけ逃げるのは卑怯なのではないか、負け犬なのではないか、などとは思わないことだ。先に述べたように人それぞれキャパシティもストレス耐性も異なる。そこで無理をして倒れたり、燃え尽きてしまって”うつ”になってしまっては元も子もない。

 やれるだけのことをやって、それでもうまくいかないときもある。そのときに大切なのはもっと頑張ることではなく「頑張りすぎないこと」だ。

 集団の中にずっといると「お前は出来が悪いが、俺たちが協力してやっているからできるはずだ」という集団意識が押し寄せてくる。マルクスはこのことを、集団で何かをやっている意識が集団内の競争を強化させ個人の効率を高めていき、集団の持つ周囲への影響力を引き上げさせるもの、として『資本論』で論じている。

 個々で仕事をさせるよりも、たとえ一人ひとりの出来は悪くても集団で仕事をさせたほうが競争心が芽生えて効率がよくなる。そこを見越して資本家は労働力商品を集めて集団で仕事をさせるわけである。

 組織が個人に「頑張れ」というのは、それが組織の利益につながるからだ。逆にいえば、頑張れないのであれば組織の利益にも貢献できない。それならば「頑張らない」という選択をしても何も不合理ではないのである。

進攻も退却も一気に

 それ以上頑張らないことを決めて逃げるなら、一気に逃げることが大切だ。攻めるのも一気なら退却も一気。戦術で最もダメなのが逐次投入、逐次離脱である。それをやると組織も個人もボロボロになる。

 少しでも可能性があるならばと、少しずつ退却すると残軍が叩かれ、結果的に逃げ延びる人数は減ってしまう。逃げるのは逃亡ではなく、態勢を立て直すための戦術なのだということを知らないと無駄死にを増やす。将来の勝利のために、今は逃げるということ。この損切りができないのが戦場に限らず日本の組織の特徴でもある。

 『キングダム』でも、軍略家の玄峰の本陣に突撃した信は、その行動を予測していた玄峰の罠にはまって後続隊を断ち切られてしまう。策略が奏功した玄峰は、ねばる秦軍をよそにそれ以上の戦いをせず「退却じゃ」と退く。

 あとに残ったのは秦の兵たちのおびただしい屍。玄峰への突撃を称賛された信だが、それは明らかに失敗だった。深追いをせずに退却して自軍の損害を最小限にした玄峰のほうが上を行っていたのである。

SBCrOnline
2018年1月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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