「中年の脳がもっとも知的」と考えられている脳科学的な理由――研究結果が示す「脳は経年劣化しない」という事実

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ド忘れして加齢を感じる中高年

「ああ、何だっけあの人の名前、えーと、顔はわかるんだけど……」

「○○さん、あのあれ、何だっけ、あれをあれしておいて……」

中高年だったら、誰でも身に覚えがあるシーンです。個人差はありますが、大体40歳ぐらいからこのような経験をする頻度が増えてくるのではないでしょうか。「やれやれ、年を取ったな」「脳が衰えたのか」と自信をなくし、若い人をうらやましく感じてしまいます。

ところがなんと、現在の脳科学の世界では、「脳は加齢によって衰える」という説はもはや常識ではないようなのです。それどころか「中年脳がいちばん賢い」とさえ言われているのだとか。なぜなら、中年の人(大体40歳から60歳)の認知能力は若い人の脳と比べても決して劣っていないという研究結果が多数存在するからです。本当なら中高年にとって朗報ですが、ちょっと信じがたい話でもあります。

ことの真偽を探るため、書籍『年をとるほど賢くなる「脳」の習慣』をひもといてみましょう。この本は、最新の脳科学研究の成果を医療・科学専門のジャーナリストが一般読者向けにまとめたものです。

著者のバーバラ・ストローチ氏は、このなかで明確に述べています。

「『中年になると脳は衰える』というのはウソ。脳の力は中年期に頂点に達する」

またこの本の監修者である著名な脳研究者の池谷裕二氏も、次のように著者に同調します。

「『中年は人生で最も満たされ、そしてまたもっとも効率よく脳を使いこなすことができる、人生でも特別な時期である』と、私自身の実感としても、そして脳研究者として科学的な根拠を提示しながらでも、躊躇なく主張することができます」

本書にはこのような主張を裏づける研究結果が多数解説されています。ほんの一部ですが紹介しましょう。また、「よりよい人生のための、脳に効く中年期の過ごし方」も本書の大事なテーマですので、本稿の後半に取り上げてみます。

中年脳の認知能力は、決して劣っていない

中年になると頻繁にド忘れをするのに、なぜ「中年脳がいちばん賢い」と言えるのでしょうか。1つの研究結果を紹介しましょう。

アメリカで行なわれた、「シアトル縦断研究」と呼ばれる知能の加齢変化についての有名な研究があります。「縦断研究」とは、同じ人々を長期にわたって調査する研究手法を言います。この研究内容をわかりやすく箇条書きにすると次のようになります。

・1956年から40年以上にわたり、7年ごとに対象者(同じ人々)の知能を調査
・調査対象者は無作為に選ばれた20歳から90歳の健康な成人、男女比は均等、職業はさまざま
・「語彙」「言語記憶」「数能力」「空間認識」「知覚速度」「帰納的推論」の6種類の認知能力についてテストする

この研究で得られたのは次のような意外な結果でした。

・参加者の認知テストの成績は、どの時期よりも、中年期(40歳から60歳くらいの間)が最もよかった
・なかでも、6種類のテストのうち「語彙」「言語記憶」「空間認識」「帰納的推論」の4種類で中年期の得点が高かった

つまり、この研究結果によれば、脳の情報処理速度は加齢によってある程度遅くなるものの、認知能力のうち重要な部分は中年期にもっともすぐれた状態になる、ということが示されたのです。この結果は、私たちの脳と加齢に関する常識に反するものです。

本書ではこの他にも、「航空管制官を対象にした認知能力テスト」や「パイロットのフライトシミュレーション・テスト」など、年長者と若年層を比較した調査結果が報告されています。それらはいずれも、中年の脳は若い脳と比べても決して劣っていないことを示しているのです。

日本実業出版社
2018年1月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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