ビジネス特化型SNS「LinkedIn」は、なぜ急激にユーザーを伸ばしたのか

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Photo by Greg Bulla/Unsplash

LinkedIn(リンクトイン)は、2003年5月にサービスを開始した、世界最大級の「ビジネスSNS」です。人材採用や転職、マーケティング、営業など、ビジネスにおけるネットワーク構築に欠かせないSNSとして、世界中のビジネスパーソンに利用されています。日本国内でも、「新しいビジネスチャンスを見つけるためのツール」としてユーザー数を急速に伸ばしています。

どうして、LinkedInは唯一無二のビジネスSNSとしてビジネスパーソンに活用されるのでしょうか。『LinkedIn活用大全』の著者であり、株式会社アースメディアの代表取締役として「ソーシャルリクルーティング」の可能性を追求する松本淳さんにお話をうかがいました。

※本記事は『LinkedIn活用大全』(松本淳 著)の一部を抜粋・再編集したものです。

LinkedInは「ビジネスSNS」

近年、SNSの社会への浸透にともない、「SNSをもっとビジネスにも活用するべき」という機運が高まってきました。SNSのビジネス活用はTwitterやInstagramでもここ数年でかなり活発になっていますし、さらにはYouTubeやTikTokなどの動画SNSの活用も急速に進んでいます。

しかしながら、SNSのビジネス利用における問題は、匿名性が高い場合には「相手の人となり」がわからないということです。その点、Facebookは「個人のプロフィールが実名でわかる」ことが重宝され、ビジネスシーンでの根強い需要に応えてきました。ただ、「プライベートの知り合いが多い中で仕事の宣伝をするのは気が引ける」などの声があるように、ビジネス利用とプライベート利用の混在が課題として残ります。

そのような状況のなか、日本国内でもLinkedInのコンセプトと機能に再び注目が集まるようになってきました。LinkedInは「ビジネスSNS」なので、ビジネスで利用することへの気兼ねは基本的に必要ありません。また、LinkedInも実名文化であり、かつ、他のSNSよりもはるかに詳細に個人の経歴やキャリア情報がわかるため、ビジネス上の新しい出会いやつながりを構築するのに高い利便性を有します。LinkedInの日本国内での本格的な発展に関し、環境的な準備が整いつつあるといえるでしょう。

1.効率的な営業手法として

ビジネス上の新しい出会いやつながりが生まれやすいといった利便性から、「LinkedInは人材採用や転職のためのSNSだ」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、実際には、グローバルでは営業(ソーシャルセリング)やマーケティング領域での利用の割合が高まっています。転職に限らず、もっと広い意味で「新しいビジネスチャンスを見つけるためのツール」として使われているのです。

たとえば日本の場合、新規に顧客を開拓する場合、まだ「テレアポ」をメインの手段とする会社も少なくありません。しかし欧米では、ビジネス上における顧客の新規開拓においても、LinkedInを軸に展開することが主流になりつつあります。

テレアポの場合は、まずはターゲットの電話番号リストをあの手この手で集めることから始まります。しかし、LinkedInを使う場合は、新しく開拓したい相手先はすでにLinkedInのアカウントとして存在しています。たとえば、米国の人口は3億3000万人ほどですが、労働人口は1億6000万人強です(独立行政法人 労働政策研究・研修機構のデータより)。それに対し、米国内でのLinkedInユーザー数は、1億8000万人以上にものぼるのです。LinkedInのユーザーには学生やリタイアしたシニア層も含まれているためです。上記の数字は「米国では、仕事をする人の大多数はLinkedInのアカウントを持っている」ことを意味します。仕事でアポイントを取りたい人は、LinkedIn上のどこかに存在している可能性が高いということです。

「まずは会社の代表番号に営業電話をかける」という不確定要素の強い方法ではなく、「◯◯業界在籍のマーケティング部長職」というような条件で対象者を絞り、DMなどでピンポイントにアプローチできるのです。どちらが、より効率的な営業手法かは明白です。

2.転職やキャリアアップの手段として

もともとの強みである転職やキャリアアップのためにLinkedInを使う人もますます増えてきています。キャリアアップにおいて大切なのは「転職の成功」だけではなく、「長期的にキャリアを考える」という意識です。自分の経験をLinkedIn上でアップデートしておくことにより、外から良い話が舞い込んでくるチャンスを増やすこともできます。

また、自分と同じような経験を持つ人のキャリアステップを知っておくことは有益です。自分自身のマーケット内での位置づけ、強化すべき点を把握する助けになるからです。さらに、LinkedInでは興味がある人のキャリア情報を閲覧できるため、自分のロールモデルとしてベンチマークにすることも可能です。自分の動き次第では、その人と直接コミュニケーションを取ることも可能です。実際、LinkedIn内での交流をきっかけに、その後の転職実現に至るケースも増えています。

そして、普段からキャリアアップのチャンスを探しておくことは、転職以外に現在の仕事でのチャンスを増やす効果ももたらします。自分とつながっている人の発信から最新の技術情報や業界の動向情報が得られますし、さらに個別に交流を深めることにより、大きなビジネス取引に発展するケースもあります。

3.チャンスが広がる3つの活用メリット

ほかにも、ビジネスパーソンがチャンスを広げるツールとしてLinkedInを使うメリットは沢山あります。

■副業(複業)のチャンスが増える

SNSでは不特定多数に向けての情報伝達もできますが、一方で、SNSは「1対1」の関係性作りを得意とするプラットフォームでもあります。自分の個性を活かして取引先や業界のキーマンとの交流を深めることにより、LinkedInならではの特別な関係を作ることも可能です。

また、「複業(副業)」がもはや特別なことではなくなり、公式に複業OKを宣言する会社も増えました。LinkedInは、自分のキャリアや経験をPRできる場なので、複業の機会を得られることも多いプラットフォームです。TwitterやInstagramとは違い、個々のプロフィールが明らかなので、発注する側としても安心して依頼することができます。実際に、LinkedIn上では、複業案件の成立もかなり増えてきているようです。

■ほかのSNSよりも運用効率がいい

一般的にSNS運用では、一定のレベルまで知名度を上げ、実績を出すまでにかなりの時間がかかるものです。しかしLinkedInでは、それほど時間をかけなくても効率的に運用成績を伸ばし、ビジネスにおけるメリットを享受することが可能です。実際に、LinkedInを使いはじめてから1カ月程度でも、つながりを増やし、商談のためのアポイントが取れるケースがあります。LinkedInは、時間において投資対効果の高いSNSだといえます。

たとえばFacebookの場合、リアルに知っている人だけがつながる文化が強いので、速いペースでつながり(Facebookでは「友達」)を増やすのは簡単ではありません。通常は何年もかけて、実際に会って名刺交換をした人などを中心に少しずつネットワークを増やすことになります。

しかしLinkedInは、Facebookに比べると、もっとビジネス寄りの「パブリックでオープン」な文化とアルゴリズムを持っているので、もっと新しい人々と積極的につながることが可能です。SNSにおける「文化」の概念は大切です。Facebookでは「知らない人からの友達申請はNG」という方針の人が多いのですが、LinkedInでは「つながり申請を積極的に受ける」スタンスの人が少なくありません。それは、プライベートなつながりを重視するFacebookに比べ、LinkedInは、多くの人が「新しい機会やビジネスチャンスを得る」ことを目的に使っているからです。

「つながりの増やしやすさ」、そして「運用の伸ばしやすさ」は、SNSのビジネス活用において重要な要素です。他にも大切なのは、「投稿がいかに多く閲覧されるか」、そして「ビジネスにつながるコミュニケーションをいかに増やせるか」ということです。この点においても、LinkedInはビジネス向きのSNSだといえるでしょう。

■投資対効果が高い

Twitterの場合は、国内のユーザー数が多く、かつ多くのアカウントが気軽に投稿する場なので、投稿してもすぐに注目を集めるのは至難の業です。本気で伸ばそうと思ったら、1日に何ツイートもする努力を長期間続けるなど、フォロワー数が一定の水準にまで達するのにかなりの時間を要します。「SNSの運用が大変」だというのは、Twitter運用においてはまさにその通りだと感じます。

また、近年ではYouTubeやTikTokなどの動画SNSについてもビジネス活用が進んでいますが、動画という分野は、制作に大きな工数がかかることが普通です。ゆえに、ビジネスで成果を出すレベルまで続けるにはかなりのリソースを要します。運よく成功した場合にはメリットも大きいのですが、その裏で、はじめてみたのは良いものの、途中で脱落するケースが多いのも現実です。

LinkedInは、他のSNSの運用にかかる手間や工数に比べ、比較的早い段階において実績を出しやすいSNSだといえます。つながりの数も増やしやすく、早い段階でビジネス上のブランディングを確立することも可能です。これは、単なる趣味のSNS運用ではなく、仕事にSNSを活かすという目的や観点においては重要なことです。投資対効果が高いことは、ビジネスにおいては必須の要素だといえるでしょう。

松本 淳(まつもと じゅん)
株式会社アースメディア代表取締役CEO。1997年同志社大学法学部卒業後にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社、人材紹介事業の立ち上げメンバーとして事業企画を担当。2003年HRテックのジョブダイレクトを創業、革新的なビジネスモデルが市場に評価され急成長する。2008年、上場準備を進める途上でリクルートによるM&A提案を受け事業を売却。現在は、LinkedInなどの各種ソーシャルメディアを基盤とする「ソーシャルリクルーティング」の可能性を追求し、再び人材業界に新しい価値をもたらすべく事業を推進中。著書に『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(2021年フォレスト出版)がある。
【株式会社アースメディア】
【松本淳さんのLinkedInプロフィール】

松本淳(株式会社アースメディア代表取締役CEO) 協力:日本実業出版社

日本実業出版社
2022年4月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本実業出版社

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