【話題の本】『世界』junaida作

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■大人も楽しい奇想空間

小さな金文字のほかには赤い王冠だけ。絵本かアートブックか、表紙からは判別が難しい。各地の書店で表紙を見せて陳列されているので、見かけた人は少なくないだろう。

作中には文字が一つもなく、版元の福音館書店は「絵を読む絵本」と呼ぶ。作者は大規模な個展が巡回中の画家、junaida(ジュナイダ)さん。伊坂幸太郎著『逆ソクラテス』などの装画も手掛けている。

本作のシンプルな表紙を開くと、いくつもの欧州風の城や塔を階段と樹木で結んだ異世界が広がる。そこに浮かぶのは馬上の騎士、機関車、気球…。謎の生き物や不思議な物体がびっしりと描き込まれ、奇想が頭から漏れ出たような空間だ。

絵本としては多い初版2万部を1月20日に発行。というのも、書店員に作者のファンが多く、絵本の制作段階から話題になっていたため。絵本は対象となる子供の年齢や学年が示されるものだが、本作は大人のファンも想定。「親子で楽しんでいます」といった反響もあるそうだ。

絵本とみるなら高めの価格、アートブックとみれば手頃か。楽しみ方はそれぞれだが、赤い王冠を被った人物がどこに何人いるか、探すのも面白いかもしれない。紙の本ならではの仕掛けも。(福音館書店・2860円)

寺田理恵

産経新聞
2024年3月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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