『寄り添う言葉』永田和宏/小池真理子/垣添忠生/小池光/徳永進著

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寄り添う言葉

『寄り添う言葉』

著者
永田 和宏 [著]/小池 真理子 [著]/垣添 忠生 [著]/小池 光 [著]/徳永 進 [著]
出版社
集英社インターナショナル
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784797681352
発売日
2024/02/07
価格
979円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『寄り添う言葉』永田和宏/小池真理子/垣添忠生/小池光/徳永進著

[レビュアー] 郷原佳以(仏文学者・東京大教授)

 二人の人がいれば、必ずどちらかが先に旅立つ。伴侶の死を経験した人は数知れない。しかし、その苦しみを分かち合おうとする試みは十分にあっただろうか。

 永田和宏と河野裕子は著名な歌人夫婦だった。河野は2010年、長い闘病の末に亡くなった。永田はこれまでその経験を詠み、語り続けてきたが、本書での向き合い方は少し違う。自分と同様に最愛の伴侶を失った人、また多くの患者を看取(みと)った人と語り合うことで、亡き妻との思い出に立ち返るのだ。対談相手のうち二人は医師、二人は作家と歌人だ。そのうち三人は伴侶を癌(がん)で亡くしている。

 しかし本書はけっして、伴侶の癌がわかったとき、伴侶を亡くしたときはこうすればよい、という指南書ではない。本書に読まれるのはただ、自分たちはこうだった、という話だけだ。たとえば最初の対談相手、作家の小池真理子は同業の夫、藤田宜永を亡くした点で永田と共通しているが、伴侶の癌がわかったときに両夫婦が行ったことは対照的である。しかしいずれからも浮かび上がってくるのは本物の愛である。これは愛の本である。(インターナショナル新書、979円)

読売新聞
2024年5月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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