賞金総額2000万円! 受賞前から“稼げる”文学賞を「ピッコマ」が立ち上げたワケ 受賞のコツも初公開

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受賞できなくても稼げるなんて…!(特設サイトより)

日本で一番有名な文学賞の「芥川賞」でも賞金は100万円なので、いかに大盤振る舞いなのかがわかるだろう。「ピッコマ」がスタートした新しい文学賞の最優秀賞に選ばれれば賞金1000万円、その他の賞も含めると賞金総額は2000万円だというのだ。

ピッコマはコミックファンにはすでにお馴染みのサービスだろう。(株)カカオピッコマが2016年にスタートさせた、電子マンガやノベル(小説)が読めるサービスで、2023年のモバイルアプリマーケットの消費者支出が日本で1位、世界でも17位にランクインするほどの売上を誇っている(出典:data.ai「2024年版モバイル市場年艦」)。

そんなピッコマが昨年、「ピッコマノベルズ大賞」を創設した。賞金総額2000万円の内訳は、年間最優秀賞(大賞)の1作品に1000万円、優秀賞の2作品に300万円、奨励賞の4作品に100万円。さらに、1次審査を通過した時点でピッコマでの連載が確約され、作品の原稿料や販売収益、広告収入まで応募者に支払われるという、驚くほど“稼げる”仕組みになっている。

現在は第2回の応募を受け付けている最中だというが、なぜピッコマが大金をかけて文学賞を始めたのだろうか。また、どんな作品を応募すれば超高額な賞金を得られるのだろうか。同社でオリジナルIPの事業を担当している杉山由紀子さん(常務執行役員)とピッコマノベルズ大賞の運営を担当している浅野茂太さん(事業開発チーム責任者)、ピッコマの中で作品分析を行なっている斉藤麻貴さん(IPトーチングチーム責任者)に話を伺った。
※以下、敬称略。

***

■マンガの原作として読まれるノベル(小説)

――そもそもピッコマとはどのようなサービスなのでしょうか。

杉山:ピッコマは、電子マンガやノベルをアプリとWEBで読めるプラットフォームサービスになります。2016年のスタート当初では珍しかった、1巻ごとではなく1話ごとに作品を読む形の「話売り」をしており、23時間待てば無料で次話を読める「待てば0円」という仕組みが特徴です。公開作品の多くは出版社さんや作家さんにご提供いただいたもので、現在は16万冊以上を公開しております。会員登録をしなくても「0円」と表記している作品を読めたり、会員登録も無料で、広告動画を閲覧すれば作品閲覧や購入に使えるポイントを獲得できる仕組みもあります。

ピッコマは電子マンガサービスとして後発で、ガラケー時代からマンガサービスを行なっている「コミックシーモア」さんや「めちゃコミック」さん、大手IT企業のマンガアプリ「マンガボックス」さんや「LINEマンガ」さんなどが既に人気になっていたり、出版社系の「マガポケ」さんや「ジャンプ+」さんにも後れてスタートしましたので、当初は他社の方から「え、今からやるんですか?」と言われることもあったそうです。マンガのコアユーザーだけをターゲットにせず、ライトなユーザーにもマンガが面白いコンテンツだと知ってもらいマンガ業界の拡張を意識してサービスを続けた中で、2020年頃からスマホユーザーに最適化した縦読み・フルカラーの作品「SMARTOON(スマトゥーン)」の人気が高まり、ユーザーを大きく伸ばすことができました。
今回のお話のテーマでもあるノベルコンテンツも配信していまして、原作ノベルとコミカライズ化されたマンガやSMARTOONを一緒に楽しむ読者の方が多いのが特徴としてあります。

――マンガの原作ではないノベルは掲載していないのですか。

杉山:いえ、コミカライズしていないノベルももちろん掲載しています。ピッコマでノベルを掲載し始めたのは2016年年末頃だったんですが、当初はなかなかノベル単体でユーザーの方に見ていただく機会が作れなかったんです。せっかく出版社さんにご提供いただいたノベル作品を、どうにかユーザーの方に届けたいと試行錯誤した結果、マンガから原作ノベルを読んでいただける様、読者を誘導する機能を増やしたのが上手くいきました。

――原作がないマンガも多くあるように思いますが、マンガにとって原作は重要なのでしょうか。

杉山:日本のマンガは原作がない作品も多いですが、「異世界転生系」「異世界ファンタジー」と呼ばれるジャンルはノベル原作からコミカライズされるのが一大ジャンルとして存在しています。一方、SMARTOONについては原作ノベルからSMARTOON化された作品が非常に多く、原作ノベルがなくても、原作・シナリオ担当やネーム担当・作画担当・着彩担当などの役割を分担した「スタジオ制」で作られる作品がほとんどです。ただし、これはピッコマで配信している作品の事例で、個人の作家さんが一人でWEBTOONを描くケースももちろんあります。

原作があることで、マンガやSMARTOONを作る時に、先の展開が分かった上で最適な構成や演出ができるメリットもありますし、何より、原作の人気が読者の好きなもののバロメーターにもなるので、特に制作費が高価なSMARTOONにとって、原作の方向性や読者需要が先に検証できるのはとても重要だと思います。

そんな中、私たちに作品をご提供くださる出版社やスタジオから、「SMARTOONの原作になるような小説作品がなかなか見つからない」という悩みの声を多く伺っていました。それで、ピッコマが主体となってマンガやSMARTOONの原作になりえるような小説を集めようと、「ピッコマノベルズ大賞」を創設することにしました。

Book Bang編集部
2024年5月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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