「プログラミング教育」必修化でどうする? 有識者がマンガで解説
[レビュアー] 足立謙二(ライター)
この新学期から全国の小学校で「プログラミング教育」が一斉に必修化されます。新型コロナウイルスの影響で全国で臨時休校する小学校が多く出て、海外のようにオンライン授業が日本では行えないのかといった関心が高まっています。「プログラミング教育があと1年、2年早ければ!」と歯痒く感じている方も少なくないでしょう。その一方で、「何から始めたらいいの?」「コンピューターとか正直苦手で」など戸惑いも多いと思います。
そんなコンピューターは苦手…と悩めるお母さんお父さん、そしてもちろんお子さんたちに「プログラミング教育」の初歩の初歩をやさしく教えてくれるのが『マンガでなるほど! 親子で学ぶ プログラミング教育』(インプレス刊)という一冊です。
プログラミング教育のエキスパートがマンガで簡単解説
本書は、苦手な人には言葉を聞いただけで鳥肌が立ちそうな「プログラミング教育」の初歩をマンガでやさしく教える入門書です。主人公の「マルサイさん」は、普段はタブレット端末を使って自宅で仕事をしているにも関わらず、コンピューターの細かいことにはチンプンカンプンなお母さん。新学期からいきなり「プログラミング教育」の洗礼を受けることになる3人の子どもたちと一緒に、その基本を学んでいくというストーリー仕立ての内容になっています。
そして、「プログラミング教育」という言葉を目にした途端にフリーズを起こしてしまったマルサイさんや子どもたちに分かりやすい言葉で解説してくれるのが、マルサイ家の隣に引っ越してきた「ナナコ先生」。プログラミング教育の最前線で活躍するナナコ先生のモデルになっているのは、文科省のプログラミング教育有識者メンバーでNPO法人CANVAS理事長の石戸奈々子さんです。
「よみ、かき、プログラミング」の心構えを身につける
ナナコ先生が本書を通じて伝えようとしているのは、すでに当たり前になりつつあるコンピューター社会を生き抜くための基礎となる「よみ、かき、プログラミング」の心構えです。
気が付けば、スマホやゲームに限らず、洗濯機や冷蔵庫など普通の白物家電や自動車、駅の自動改札などなど、もはやコンピューターと無縁な生活は考えられないのが現実。それなのに、私たち日本人はコンピューターと上手に付き合えているとは言い難いのがいつわり難い実態でもあります。
自動車免許を取るときに、まがりなりにも車が動く仕組みを勉強しなければならないように、今後コンピューターと付き合う上で最低限押さえておくべき考え方や仕組みを、今のうちに身に着けておきましょうというのがプログラミング教育の大まかな狙いです。その言葉が表すようなプログラミングに関する教育だけではないことを、この本を読んではじめて知りました。
超入門書ですから、マンガの描き方は概ねゆるっとコミカルな印象。とは言いながらも、ナナコ先生が解説する内容には、「Society 5.0」「STEAM教育」の狙いなど新しい言葉に踏み込むなど奥深さがあります。「プログラミングとはなんぞや」といった基本的な知識に始まり、なぜ今プログラミング教育が必要なのか、世界各国と比べて遅れを取ってしまっている日本の現状、さらに将来私たちの生活環境がどうかわるのかなど、大人にとっても十分読み応えがあります。たかが学習マンガと侮るなかれ、です。
プログラミング教育は長年の宿願?
ちなみに、筆者は恥ずかしながら、この本を読むまで、「プログラミング教育」とはそういう新教科が時間割に加わるのかと思い込んでいました。しかし、実際はそうではなく、国語や算数などこれまでどおりの各教科の授業に、プログラミング的な考え方を取り入れて、総合的に子どもたちの論理的な思考を育てようということなんですね。ご存知でしたか?
思えば、筆者が中学生だった昭和ウン十年頃、生徒の国語読解力の低下が数学の学力低下に影響を与えているという指摘がすでにありました。その状況は、今も残念ながらそれほど変わっていない気がします。そんな長年この国が抱え込んでいたどん詰まりの状況を打破する目的も、プログラミング教育には込められているように思えます。
本書は実際にどんなパソコンを用意したらいいか、インターネットと上手くつきあう方法や情報過多の世の中から正しい情報を得ることの大切さなど、プログラミングだけでなく、今さら聞けないコンピューターの初歩も押さえた、すべての子どもに必要なスキルを知るための超入門書として今こそ読んでおきたい一冊です。