枝豆に顔があったら、おもしろい? 夫婦で活動する絵本作家ユニット「accototo」に話を聞きました

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

ぼく くま

『ぼく くま』

著者
accototo ふくだとしお+あきこ [著]
出版社
みらいパブリッシング
ISBN
9784434255748
発売日
2019/01/31
価格
1,210円(税込)

書籍情報:openBD

おばけのまめ

『おばけのまめ』

著者
accototo
出版社
ポエムピース
ISBN
9784908827334
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

枝豆に顔があったら、おもしろい? 生活のなかで浮かぶアイデアを絵本に。夫婦で活動する、人気の絵本作家ユニット「accototo」に話を聞きました

[文] みらいパブリッシング


絵本作家ユニット「accototo」のおふたり

自然豊かな長野県で 3人のお子さんを育てながら、夫婦で絵本をつくり続けているユニット「accototo(アッコトト)」。

幼少期の愛子さまが『うしろにいるのだあれ』を愛読されているニュースが話題になったことから、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

今回はおよそ20年にわたって、さまざまな作品を生み出し続けているおふたりに、ユニットとして活動することになった経緯や絵本のアイデアの源泉などを伺いました。


愛され続けるaccototoの絵本。この絵、どこかで見たことがあるかも?

きっかけは、誕生日にプレゼントしたオリジナル絵本。

――おふたりはユニットの絵本作家として活動されていますが、きっかけはどのようなものだったのでしょうか?

ふくだ としお(以下 としお):絵本をつくりはじめたきっかけは、実はフランス留学中に出会って間もない頃のあっこ(ふくだ あきこさん)の誕生日なんです。あっこは絵本が好きだったので、独学の油絵でオリジナルの絵本をつくってプレゼントしました。

僕自身はそれまで絵本に縁がなかったのですが、実際につくってみると、絵本には「物語を展開させられる面白さ」があることに気がつきました。1枚の絵にはできないような、さまざまな表現ができる絵本制作に可能性を感じて、日本に帰国してから本格的に絵本をつくるようになりました。

――あきこさんへのプレゼントが、絵本制作のきっかけだったのですね。そこからなぜ、おふたりで絵本を制作するようになったのですか?

としお:あっこに色づくりを手伝ってもらうようになったことで、自然と今のユニットのスタイルに落ち着きました。僕が絵を描くと色使いがかなりダークになるのですが、あっこは舞台美術などを勉強してきたからか、とても明るくて絵本にぴったりな色使いができるんです。

今では色だけでなく、ストーリーやラフ案、背景のコラージュなど、絵本づくりのさまざまな工程を一緒に担うようになりました。

日常生活のなかで浮かぶ、絵本のアイデア。娘や息子の言葉が、絵本のエッセンスになることも。

――絵本のアイデアは、どのように生まれてくるのでしょうか?

ふくだ あきこ(以下 あきこ):私たちの場合は、日常生活のちょっとしたことからアイデアが生まれてきますね。

たとえば、『おばけのまめ』という絵本は、枝豆を食べていたときに思いついたアイデアでした。枝豆の皮をむいて出てきたマメに顔があったら可愛いよねって話していて。

としお:ちょうどこのとき、「おばけ」を描いた絵本もつくりたいなと思っていたので、「顔のある豆」のアイデアと組み合わせて、『おばけのまめ』を制作していきました。

――暮らしの中にある1つ1つのものが、絵本のアイデアにつながっていくのですね。

あきこ:そうですね。たぶん、いつも無意識のうちに「何かおもしろいことはないかな」とアンテナを張っているのだと思います。

としお:僕らの場合は、ふたりで顔を突き合わせて机の上でアイデアを考えることはほとんどなくて、生活する中での気づきを大切にしていますね。

――なるほど。おふたりは昔から、日常生活の中のおもしろさを発見することが得意だったのですか?

あきこ:あぁ…どうなんだろう。

としお:僕はとてもいたずらっ子で、しょっちゅう学校の先生に怒られているような子どもでした。身近にあるものを使って、どうしたら楽しくできるかな、というのは常に考えていたかもしれないです。

――子どものころの気持ちを、今も忘れていないということなのでしょうか。

としお:いえ、それはやはり忘れていってしまいますね。でも、僕らの子どもたちが思い出させてくれるんですよ。子どもの行動を見ていると、「自分もこうだったな」と子ども心を思い出すことがよくあります。子どもの言葉や行動が、絵本のアイデアにつながったりもしますね。

あきこ:そうですね。子どもの言葉が、そのまま絵本のタイトルになったりすることもありますし、子どものひとりごとの内容が面白ければ、それを絵本の物語に仕立てたりすることもあります。

――お子さんの言葉や行動が、絵本のアイデアにつながることもあるのですね。

としお:はい。子どもたちが僕らのつくる絵本に、いろいろリクエストをしてくることもありますよ。

特に今7歳の娘は、2~3歳のころから僕の仕事を見ているのが好きで。机の上に座って、僕が制作している様子をじっと見ているんです。それでよく「自分たちを絵本に描いて」とか「色はこっちの方がいい」とか、娘なりの意見を言ってくる。その意見を聞けないことも多いのですが、娘の言うとおりにしたほうが良い作品になるかもしれないと思うときは、取り入れるようにしています。

あきこ:子どもたちのリクエストって、自分たちにはない発想だったりもするんです。なるほどと思えば、作品に反映させています。

ちなみに、『おばけのまめ』の最後のページには、私たち家族をモデルにしたおばけを描きました。子どもたちを登場させてあげたり、アイデアを生かしてあげたりすると、絵本が完成したときに、やはり喜んでいますね。

――お子さんにとっては、唯一無二の素敵な経験ですね!

あきこ:うん、子どもにとっては、そうかもしれないですね。

自分なりの「表現したいテーマ」を見つけることが、オリジナリティのある絵本につながる。

――長く絵本をつくり続けられているおふたりにとって、絵本作家という仕事の醍醐味は何だと思いますか?

としお:やはり、僕らの絵本が多くの子どもたちに届いているのを実感したときは、この仕事をしていて良かったなと思いますね。

子どもたちが絵本を読んで気に入ってくれただけでなく、保育園や幼稚園で劇にしてくれたり、海外でも翻訳されて読まれたりしているそうなんです。僕らが絵本を届けたい子どもたちのことを想うと、やはりこれからも良い作品を制作していきたいと、責任を感じます。

あきこ:絵本をお子さんと一緒に読んだ保護者の方から、「絵本を読んで、自分も元気をもらった」というコメントをいただくこともあるのですが、そのような大人からの感想も嬉しいですね。絵本をつくって良かったと思える瞬間です。

――絵本を制作するうえで、意識していることはありますか?

としお:そうですね…自分が欲しい絵本や大切な人にあげたくなる絵本をつくる、というのを軸に持って、活動しているかもしれないです。この軸があることで、大きくぶれることなく、制作を続けられている気がします。

あきこ:私は短大で空間芸術を学んでいたときに教わったことを大切にしているかもしれないです。

美術系の学部では、デッサンを描いたら、写真に撮ったり、鏡に映したりして、客観的に絵を見返すんですよ。私も絵本のラフをつくったら、いったん寝かせておいて、自分をリセットしたうえで改めてラフ案を見返しています。「自分の作品を第三者の目線で改めて見てみる」というのは、ずっと大切にしていることです。

としお:あとは、自分の中の表現したいテーマを見つけることも大事だと思います。

僕自身は大学で金属工芸を学んでいたころから、人やものの「つながり」を大きなテーマとして作品をつくっていました。人と人、ものとものがぐるっと円のようにつながって、いつか絶対に自分のもとに戻ってくるようなイメージです。このテーマは、今もふとしたときに振り返ると、絵本制作の根底に流れているなと感じることがあります。

何か自分なりのテーマがあると、それが自ずと作品に反映されてきて、オリジナルな絵本になっていくのかなと思います。


最初から最後までことばがつながって、しりとりの楽しさがつまった絵本『ぼく くま』

――なるほど。としおさんはどのように「つながり」というテーマにたどり着いたのでしょうか?

としお:これは自然とたどり着いたテーマで、自分でもどうしてこの「つながり」を意識しているのか分からないんですよ。

僕が一卵性の双子だからかもしれないし、これまで出会ったいろいろな人に影響を受けているのかもしれないし、さまざまな経験が合わさって、このテーマに落ち着いたのだと思っています。

学生の時に、自分のつくった作品にタイトルをつける課題があって、そこで「接点」というタイトルをつけたんですね。そのときに、これまでも僕は接点と関係のある作品をつくってきたなと気がついて。それで、僕の表現したいテーマは「つながり」なんだなと考えるようになりました。

――そうだったのですね。あきこさんが表現されたいテーマは、どのようなものなのでしょうか?

あきこ:私も「つながり」に近い想いを持っているかもしれません。

絵本を通じて、子どもが親やおじいちゃん、おばあちゃんと楽しい時間を共有してほしい。私たちの絵本が家族と大切な時間を過ごすきっかけになったらいいなと思いながら、日々絵本を制作しています。

――今後、描いてみたい絵本はありますか?

あきこ:読み継がれる絵本をつくりたいという想いは、ずっとありますね。私たちの絵本を読んで育った子どもたちが、いつか大人になったときに、自分の子どもに読み聞かせている。そんな絵本がつくれたらと、よく思っています。

としお:僕は年齢関係なく、どんな世代の人が読んでも心に引っかかるものがある、普遍的なテーマの作品をつくっていきたいです。

大人が読んでも感じるものがあって、年配の人が読んでも考えさせるものがあって、小さな子どもは子どもなりに解釈できるような絵本。難しいテーマだとは思いますが、挑戦してみたいですね。

――今日は貴重なお話をありがとうございました!

〈 おまけの質問 〉

Q. ここだけの話を教えてください。

末っ子が「浅間山に登ってみたい」と言ったことがきっかけで、家族で登山に挑戦しています。私たちの住む地域は標高2,000m級の山々に囲まれているので、登山の練習にはもってこいです。登山をはじめたときはまだ3歳だった末っ子も、成長とともに、どんどんレベルアップしています。今年の夏前から、家族で日本百名山の登山にもチャレンジしはじました。家族で山登りを楽しんでいきたいと思っています!

話を聞いた人:accototo ふくだ としおさん・あきこさん

絵本作家

「accototo」の名前で、絵本、イラスト、デザイン、壁画など、さまざまな作品を制作するユニット。緑豊かな長野県で、二女一男を育てながら活動する父と母。動物をモチーフにしたタオルや陶器など、子ども向け雑貨も展開中。『おばけのまめ』(ポエムピース)、『ぼく くま』(みらいパブリッシング)をはじめ、数々のロングセラー絵本を生み出している。

取材・文: 市岡光子

みらいパブリッシング
2021年11月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

みらいパブリッシング

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク