道徳とは何か それは「学ぶ」ものなのか

レビュー

4
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道徳教室

『道徳教室』

著者
高橋 秀実 [著]
出版社
ポプラ社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784591173268
発売日
2022/03/16
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

道徳とは何か それは「学ぶ」ものなのか

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 小学校の授業に「道徳」はあったろうか。本書を前にして思い出してみる。あった。確かにあった。だが2018年度から始まった(中学校は19年から)「特別の教科 道徳」は教科化され、通知表で評価が下されもするらしい。一体、何を学ぶのか。

 誰もが疑問を持つ「道徳とは何か」を著者は愚直なほどまっすぐに突き止めようと果敢に挑む。

 最初が肝心。まずは小学1年生の教科書を深く読んでみよう。最初はとにかく「学校は楽しい」と説いている。まずはそこから? と思う。

《「どうとく」では、よりよく いきる ために たいせつな ことに ついて、みんなで かんがえるよ》

 著者は「定年後か?」と突っ込む。より良いこととは規則正しい生活、ありがとうの気持ち、周りの人に親切に……などが挙げられている。

 それでは、と小学6年生の公開授業に参加してみた。するとそこで目にした題材はパラリンピック(走幅跳)の選手である佐藤真海さんの人生だ。彼女の人生から「見習うべき姿とは何か」と意見を出し合う。「『みんな』が承認する規範に気づき、それに従う」ことが道徳らしい。それってTHE日本人ではないか!

 さらに小学生たちに道徳についてインタビューすると、彼らは非常に冷めていた。時には60歳になる著者が人の道を諭される。優等生ではなさそうな子の意見が鋭い。

 道徳の本質を知りたくて、精神科医を訪ね、総理大臣の答弁を分析し、大人にとっての道徳をさぐっていくと「ハラスメント」という言葉にぶつかった。そうか道徳に反することがハラスメントだったのか。

 新型コロナ禍による生活様式の変容で意識が変わりつつ「みんなが承認する規範」がロシアのウクライナ侵攻でさらに大きく違ってきそうだ。「みんな」が正義を振りかざすとどうなるか。どうやって止めるのか。そこに新たな「道徳」が必要かもしれないと真剣に考えさせられた。

新潮社 週刊新潮
2022年4月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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