『自発的隷従の日米関係史』
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<書評>『自発的隷従の日米関係史 日米安保と戦後』松田武 著
[レビュアー] 古関彰一(獨協大名誉教授)
◆米公文書 丹念に読み解く
日米の安全保障が根元から問われているなかで新たな知見に充(み)ちた書物と出会った。
本書は、戦後から一九七〇年代までの日米関係を米国の公文書を読み込んで丹念に分析している。
「スマート・ヤンキー・トリック」という言葉に目を開かれた。それは南北戦争の時に使われたようだ。「あらゆる手管を使って根回しをし、最終的には相手国から差し出される欲しいものを、相手国から手に入れる」ということだ。
著者は、その例として、昭和天皇が一九四七年に、沖縄の長期租借を米国に申し出た、いわゆる「沖縄メッセージ」を挙げている。
そういえば、現行の日米安保条約も、米国は米軍基地の使用を「許される」と書いてある。最近の「自由で開かれたインド太平洋戦略」というキャッチフレーズは長年の米国の戦略であったが、最近は「安倍元首相の提唱」と米国側から言われている。
つい思わず首を縦に振ってしまう。これこそ、気づかぬうちの「自発的隷従」なのだと気づく。
六〇年代は、岸首相の安保改定が目に入りがちだが、その直後からケネディ大統領とライシャワー駐日大使の時代を迎える。彼らは、ともに安保の文化面に注目していた。
それはまた著者が長年研究してきた分野でもある。なかでも、一九六二年に開催された日米文化教育交流会議(カルコン会議)を詳しく紹介している。日本の英語教育は、この頃から大きな問題であったことがわかる。
ライシャワーが掲げた文化の時代は、またベトナム戦争の時代でもあった。ライシャワーは、沖縄基地を恒久的なものとし、在日米軍基地の自由使用を日本に認めさせ、単独での核兵器開発を阻止することを眼目に置いて、日本が自主防衛し、米軍を撤退させることなど、考えていなかったことを、米国公文書によって、丹念に論証している。
それはまた、日本国民から見ると自立を困難にし、安易な自発的隷属を続けることになったのではないか、と著者は問いかけている。
(岩波書店・3520円)
1945年生まれ。京都外国語大・京都外国語短大教授、前学長。『対米依存の起源』など。
◆もう1冊
猿田佐世著『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』(角川新書)