『オマージュ〈賛歌〉to中森明菜』
- 著者
- 島田, 雄三, 1948- /濱口, 英樹
- 出版社
- シンコーミュージック・エンタテイメント
- ISBN
- 9784401652532
- 価格
- 2,530円(税込)
書籍情報:openBD
<書評>『オマージュ<賛歌> to 中森明菜』島田雄三、濱口英樹 著
[レビュアー] 篠崎弘(音楽評論家)
◆ディレクターの美学反映
アイドル全盛期の一九八〇年代に松田聖子と人気を二分した中森明菜。その誕生からトップアイドルになるまでを、当時のディレクター島田雄三が作家陣やスタッフらとの対談をまじえて振り返る。
フリフリの衣装と似たような髪形で淡い恋を可愛(かわい)く歌う「花の82年組」アイドルたちの中で、明菜は異質だった。大御所のヒットメーカーではなく、アイドルポップスに縁の薄かった気鋭の作詞家、作曲家を次々に起用した。純情系のミディアムバラードとアグレッシブなツッパリ系ロックを交互に歌い、イメージを固定させなかった。その狙いや背景は何だったのか。作曲家が「これはまずいんじゃないの」と驚き、明菜自身も猛反発したという「少女A」はどう録音されたのか。
現在ではレコーディングの曲選びはコンペ形式で決定も合議制が多い。だが当時はディレクターの裁量や美学が存分に発揮されていた。予算も潤沢だった。時代変化も見えてくる。ポップスを生み出す現場の生々しい記録として興味深い。
(シンコーミュージック・エンタテイメント・2530円)
島田は1948年生まれ。音楽プロデューサー。濱口はライター。
◆もう一冊
中川右介著『松田聖子と中森明菜[増補版]一九八〇年代の革命』(朝日文庫)