【聞きたい。】日常に信仰、お接待の風習も 『マイ遍路』白川密成著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

【聞きたい。】日常に信仰、お接待の風習も 『マイ遍路』白川密成著

[レビュアー] 寺田理恵(産経新聞社)

真言宗の開祖、空海(弘法大師)生誕1250年で注目される「四国遍路」は、大師の足跡をたどる巡礼の旅。その札所住職が、自らお遍路さんとなって歩いた記録を刊行した。

白装束で月に数日ずつ計68日。「話しかけられたり、名産を食べたり、景色に目を奪われたり、一つ一つが楽しい。修験者の方もいれば、失恋してきた方もいる。(お遍路さんの層の)幅の広さも面白い」と振り返る。

お遍路さん同士の交流や、遍路宿の情報をふんだんに盛り込んだ。近年は外国人が増えており、「ヘンロ・ユーチューバー」を目指すイタリア人や、四国遍路は2回目というフランス人ら外国人も登場する。

泊まった宿の多くは2食付き7000~8000円程度。夕食に宇和海名産カキを出す宿もあれば、郷土料理の鯛そうめんの宿も。「宿の文化が楽しい」。巡礼は各地で行われているが、「四国八十八ヶ所霊場」の寺々を巡る四国遍路の特徴は白装束でお経を上げる人が多い点、そして歩いて巡る人が多い点だという。「異世界と感じるかもしれません」

地元住民がお茶や果物でお遍路さんをもてなす「お接待」の風習も興味深い。本書でもミカンや500円玉を渡される場面をしばしば記述。接待所に住民が集まってコーヒーや軽食を振る舞う様子も描いている。

「喜捨は仏教の基本にありますが、いろいろな人が気軽にやっていて、『お接待をして分かったけど、させてもらっている』という。遍路道を歩くと、四国遍路という信仰形態の体現者として、その登場人物になれるのです」

遍路道は巡礼用ではなく、住民が通ることで維持されてきた生活道だ。「四国遍路はカジュアルな信仰形態。生活の中にあって、まちの人々と交じり合っているもの」。書名には「一人一人の遍路がある」という意味を込めた。(新潮新書・968円)

寺田理恵

   ◇

しらかわ・みっせい 真言宗僧侶。四国八十八ヶ所霊場第57番札所・栄福寺住職。昭和52年、愛媛県生まれ。高野山大卒。平成13年、24歳で住職に。22年に刊行した初の著書『ボクは坊さん。』が27年に映画化。

産経新聞
2023年4月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク