【気になる!】文庫『住吉物語』吉海直人編
[レビュアー] 産経新聞社
皇族の血を引く美しい姫君は実母を亡くし、父である中納言が継母と住む屋敷に引き取られる。継母に妬まれた姫君は、右大臣の息子からの求婚や内大臣の息子との縁談を妨害され、老人と結婚させられそうになる。継母の計略から逃れるため、姫君は出奔し-。
『落窪(おちくぼ)物語』とともに継子いじめの代表作とされながら、あまり知られていない平安貴族のシンデレラ物語が、読みやすい古典入門シリーズから刊行された。『源氏物語』にも引用され、10世紀には成立。『住吉』は女性作家、『落窪』は男性作家とみられるという。読み比べると面白い。(角川ソフィア文庫・1144円)