『宇宙ベンチャーの時代』
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宇宙へ乗り出すリスクと報酬とは
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
この四月、日本のアイスペース社が打ち上げた宇宙船が、あと一歩のところで月着陸に失敗したニュースが大きく報じられた。だが一般には、「月着陸を目指している民間企業が日本にあったのか」ということの方に驚いた人が多かったのではないだろうか。
実は、イーロン・マスク率いるスペースX社に負けじと、宇宙開発に乗り出す企業は多く現れている。小松伸多佳、後藤大亮『宇宙ベンチャーの時代』は、こうしたベンチャー企業たちによる新たな時代を描く。
これらの企業は、もちろんただの道楽で宇宙を目指しているのではない。宇宙は、新たな産業が次々に生まれる場になっているのだ。ウクライナ戦争で威力を発揮した衛星経由ウェブ接続もその一つだし、無重力を利用した科学実験も大きな需要がある。既存の人工衛星の修理も大きなビジネスになりつつあるし、月の資源は国際的な争奪戦が繰り広げられそうな気配だ。
だが、宇宙開発に投じられる資金は巨額であるし、技術的にも難度が高く、時に生命の危険さえ生じる。この宇宙開発に伴う大きなリスクを、関係者にどう引き受けてもらうかが本書の大きなテーマだ。
スペースX社でさえ、多くの失敗を積み重ねてここまで来ている。日本人は最初から完璧を求めすぎだが、ロケットなど落ちるものだと思って見守るべきなのだろう。いつかこの分野が日本の基幹産業になる日まで、果敢に宇宙に挑む人々を応援したくなる。