息子達が独立後、料理家が辿りついた負担がスッと軽くなるひとりごはん フランススタイルのミニマルレシピを上田淳子が語る

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フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ

『フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ』

著者
上田 淳子 [著]
出版社
株式会社 世界文化社
ジャンル
芸術・生活/家事
ISBN
9784418233045
発売日
2023/05/31
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

息子達が独立後、料理家が辿りついた負担がスッと軽くなるひとりごはん フランススタイルのミニマルレシピを上田淳子が語る

[文] 世界文化社


フレンチをベースにシンプル家庭料理を提案する上田淳子さん

 一人分の料理はめんどう。でも外食やテイクアウトは毎日となると高いし、飽きる……日々の食事にこうした葛藤を抱いたことはありませんか?

 双子の息子が独立し、夫婦ふたりの生活に戻った料理家の上田淳子さんも、急に一人ごはんの日が増えてそのギャップに戸惑ったといいます。

「最初はうれしかったですよ。自分だけなら何でもいいのでラクになれる! 忙しければ外食やテイクアウトでもいいし、なんなら納豆ご飯でも十分だと」

 しかし、そう思っていたのは最初だけだったと言います。

「やはり飽きてしまいますね。なんとなく体も疲れますし、あらゆる意味で満たされません」

 そんな思いを経て自然と原点に立ち返った上田さん。ヨーロッパや国内レストランでの修行を活かした簡単でシンプルな料理から、あらゆる点でミニマル(=必要最低限)な自分自身が食事を愉しめる料理にシフトしました。

「せっかく自分のための食事なので、できればその日の気分にあった料理を愉しみたい」

 こうして生まれたのが『フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ』(世界文化社)です。

 食事作りはめんどう、でもその苦痛を減らすことはできると上田さんは言います。


鶏もも肉をレモンとハーブで軽く煮ただけのひと皿は、ご飯にもパンにも合います。

食材も手間も必要最低限なフランス的な食事

 子育てと仕事の両立を助けるレシピを提案してきた上田さんが、一人ごはんが増え、なんとなく満たされないと思ったときに、ふと頭に浮かんがだのが、若い頃にフランスで知り合ったマダムたちの台所での身のこなしでした。

「食事の仕度が軽やかなんです。レシピも見ず、分量も量らず、楽しそうにおしゃべりしながらささっと作ってくれて、しかも味も決まっていました」

 シンプルでおいしい家庭料理に、フランスならではの合理的で洗練されたスタイルを感じたと言います。

「少ない材料で簡単に作れるものを、くり返し作っているからできること」

 上田さんが見てきたマダムたちが作るふだんの食事は、材料も手間も必要最低限(=ミニマル)なレシピだったのです。

簡単に作れるのは味つけが塩だけだから

 なぜフランス的な食事がミニマルなのか?

「味つけは塩だけだから、調味料の配合は考えなくていいんです。味のバランスがくずれないので、味噌や醤油を使う日本人にとって想像以上にラクなんですよ」と塩味の手軽さを力説します。

「塩をするタイミングは最初か最後なので、途中でほかの調味料を加えることはほぼありません」

 重量に対する塩の分量が決まっていて「最初にきちんと塩をしたら仕上げに調整するだけ。なんなら食卓で塩を足してもいいくらい」と上田さんは言います。まさに気負わずに作れる料理とはこのことです。


塩味=素材の数だけ味があるということ。気分で選ぶ風味付けはアバウトでも案外大丈夫

調理法は「焼く」か「軽く煮る」の2つだけ

 調理方法も非常にミニマルです。

「短時間で料理するなら『焼く』か『軽く煮る』かのどちらかで十分。道具も小さめのフライパンひとつ」

 10~15分で作れるので、まとめて作る「作り置き」や、下準備をする「仕込み」の必要もないのがフランス流です。

 もちろんフランスの家庭料理はそれ以外にもさまざまな調理方法がありますが、自分が愉しむための食事をシビアに考えたうえで「この程度ならやってもいいかなと思うギリギリのラインです(笑)」と上田さんは語ります。

一人分でもおいしい。心と体を満たす料理

 ラクをするために上手に手を抜くことは大切ですが、せっかく自分の愉しみのために料理をするのだから、一人分でもおいしさは妥協しません。

 上田さんの理想は、食べるとほっと笑顔になり、元気が出る食事です。

 子どもが独立し家族の食事を卒業したかたや一人で食事をすることが多いかたに、その日の気分に寄り添う食事をゆったり愉しんでいただきたい、そんな思いが上田さんの提案するミニマルレシピに繋がっています。

 おいしく、自分を満たせる食事のために、上田さんのミニマルレシピを参考にしてはいかがでしょうか?

 ***

上田淳子(料理研究家)
調理師専門学校の西洋料理研究職を経て渡欧。ヨーロッパや日本のレストランで修行後、家庭でも再現しやすいシンプルフレンチや、無理しない「ふだんの食事」をベースに料理家として幅広く活躍する。プライベートではすでに成人した双子の母。子育てと仕事の両立景観を生かしたリアルなレシピが好評。著書に『かんたん仕込みですぐごはん』『おいしくなって保存もきく!塩糖水漬けレシピ』(世界文化社)などがある。

世界文化社
2023年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

世界文化社

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