すぐ実践できる仕事の作業効率を高める2つの「心理学テクニック」

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すぐに実践したくなる すごく使える心理学テクニック

『すぐに実践したくなる すごく使える心理学テクニック』

著者
内藤 誼人 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784534060266
発売日
2023/07/14
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

すぐ実践できる仕事の作業効率を高める2つの「心理学テクニック」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

経済学を学んだからといって立派な政治家になれるわけではないし、経済学の勉強をしたから大金持ちになれるわけでもありません。また、教育学を学んだから子どもをうまく育てられるということでもないでしょう。

ところが心理学者である『すぐに実践したくなる すごく使える心理学テクニック』(内藤誼人 著、日本実業出版社)の著者によれば、心理学の場合はちょっと違うようです。心理学という学問で明らかにされている知識は、ビジネスでも、受験でも、恋愛でも、人間関係でも、なんにでも応用が効くというのです。

それどころか、なにをするにしても、「こういうケースでは、こうしたほうがいいんだったな」という心理学の知識があれば、おトクなのだとか。

「おトク」とは心理学のイメージとはかけ離れた表現ですが、つまり心理学は意外なくらいに実践的だということなのでしょう。事実、本書に出てくるアドバイスは以下のようにすぐ役立ちそうなものばかりです。

○ストレス解消をしたければ、皿洗いをせよ

○長いお箸を使うと、どんな食事もおいしく感じられるのでラッキー

○株をやるのなら、まず「晴れ」かどうかに注目

○ゲーム(スーパーマリオ)で遊ぶと、頭がよくなる

○「私は若い」と思い込んでいれば、病気にならない

○人間関係の達人になりたければ、チェスを学べ

(「まえがき」より)

そんな本書のなかから、きょうは第3章「仕事術の心理学」に注目してみたいと思います。

マルチタスクをしない

ご存知のとおり、いくつかの仕事をほぼ同時進行でこなすことを「マルチタスク」と呼びます。ビジネス誌やビジネス書などで、「仕事ができる人ほどマルチタスクを実践している」などという記述を目にしたことがある方も少なくないのではないでしょうか?

けれども、心理学的にいえば、このやり方は大間違い。

人間は、一度にひとつのことしかできません。いや、複数のこともできなくはないのですが、そうすると、それぞれの作業はすべて中途半端なものになります。作業の質が落ちるのです。

さらに、ひとつの仕事に完全には集中できなくなるので、時間もかかるようになります。質が落ちて、時間もかかるのですから、「マルチタスクなんてしないほうがいい」というのが、心理学的には正しいのです。(78ページより)

オランダ・ライデン大学のマリナ・プールは、160名の高校生に宿題を課し、条件によっていろいろなことを一緒にやってもらいながら(つまりマルチタスクさせながら)宿題を終えてもらったそうです。

その際、宿題を終わらせるためにかかった時間も計測してもらったところ、「宿題以外のことはやらない」、つまり「マルチタスクなどしない」ほうが宿題を片づけるまでの時間が短くなることがわかったのだといいます。

たしかに、2つ、3つの作業を同時進行でこなしていく人のほうが、なんとなく「仕事ができる人」のように見えるかもしれません。しかし実際には、そういう人の仕事ぶりはそんなによくもないのではないかと著者は疑っているそう。いうまでもなく、そんなやり方だと集中力が削がれても当然だからです。

仕事をするときには、目の前の仕事だけに集中し、それをきっちり片づけてから次の仕事にとりかかるべき。そしてその仕事も終わったら、さらに次の仕事……というように、ひとつひとつ片づけていくほうが確実で効率もいいということです。(78ページより)

好ましい情報から伝える

ものごとを伝える際にはなにかと気を使うものですが、そこで覚えておきたいことがあります。最終的には同じ情報を伝えるにしても、最初はできるだけ好ましい情報から伝えたほうがよいというのです。なぜなら、最初からネガティブな情報を聞かされると、相手はイヤな気持ちになってしまうから。

オーストラリアにあるメルボルン大学のブレント・コッカーは、オンラインでのホテルのレビューについての実験をしています。

コッカーは、ポジティブな内容のレビュー、ネガティブな内容のレビューという順番になっているものと、その順番を逆にして、ネガティブなレビューを先に、ポジティブな内容のレビューをあとにしたバージョンのものをつくって、評価を求めてみました。

すると、消費者は、ポジティブな内容が先のレビューを読んだときに、「このホテルはいいホテルだ」と判断することがわかりました。

レビューは順番がとても大切です。(86ページより)

最初に悪いレビューを読むと、私たちはどうしても悪い印象を持ってしまうもの。そのあとに、どれだけ大絶賛しているレビューを読んだとしても、最初の悪い印象を打ち消すことはできないのです。

割合からいえば、ポジティブなレビューのほうが圧倒的にたくさんあったとしても、真っ先にネガティブなレビューが表示されていると、悪く評価される確率が高いということ。したがって、ネガティブなレビューが最初にこないように気をつける必要があるわけです。

近年は、どの業界でもオンラインでのレビューを気にするようになっています。いうまでもなく、消費者は他の消費者の声を調べてから購買決定をすることが多いからです。そのため、サクラを雇ってポジティブなレビューを書かせているところもあるという話を聞いたこともあるのではないでしょうか?

説得技法のひとつに、「両面呈示」と呼ばれるテクニックがあります。

ポジティブなことだけを伝えるより(これを「一面呈示」といいます)、ネガティブなことも含めて、両面を伝えるようにしたほうが、説得力は高まるわけですが、ネガティブなことを含めるといっても、そちらが先では失敗します。

両面呈示をするときには、その順番が重要で、まずはポジティブなことから始めなければならないのです。(87ページより)

たとえば八百屋さんでいえば、「徹底的に安さにこだわりました。ただし、不揃いのものや、虫食いのものがあるかもしれません」というアピールであれば、消費者も納得してくれるはず。

ところが順番を逆にして、「不揃いや虫食いの野菜です。ただし、安いですよ」としたのでは、多くの人が購入をためらってしまう可能性が大きくなるわけです。

こんなところからも、「人を説得したいのであれば、まずはできるだけ好ましいことからスタートする」という考え方の大切さがわかるのではないでしょうか?(86ページより)

とかく難しそうに感じてしまいがちな心理学のおもしろさを、コンパクトにまとめた一冊。リラックスして読み進めることができるので、気楽な気持ちで手にとってみてはいかがでしょうか?

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2023年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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