『参謀の教科書 才能はいらない。あなたにもできる会社も上司も動かす仕事術』
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『参謀の教科書』伊藤俊幸著(双葉社)
[レビュアー] 小泉悠(安全保障研究者・東京大准教授)
リーダーシップに関する本は数多(あまた)あるが、部下がリーダーを補佐するフォロワーシップに関するものはそう多くない。フォロワーのあり方、ということでいえば「欲しい人材」論は少なくないが、これはリーダー目線のフォロワー論である。そうした中で「自らがよきフォロワーになるには」に焦点を当てた本書はユニークだ。
海上自衛隊出身の著者がよきフォロワーのロールモデルとするのは「参謀」である。本書でも繰り返し述べられているように、参謀とは天才軍師のことではない。組織の究極的な目的を考えて汗をかく、地味な仕事であって、そのためのハウツーが本書では豊富に紹介されている。
著者の自衛隊での体験談も面白い。官僚組織の事なかれ主義や思い通りにならない部下に悩みながら奮戦する姿は、上意下達と思われがちな自衛隊像に修正を迫るものでもあるし、参謀の仕事を具体的に知るケース集として読めるだろう。
防大生時代の自身の挫折と再起を描いた最後の章も、これから「参謀」を目指す世代へのエールとして暖かい印象が残った。