スティーブ・ジョブズから学んだ、傍観者でなくいつも当事者でいる意義とは?

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世界の先人たちに学ぶ 次世代リーダー脳

『世界の先人たちに学ぶ 次世代リーダー脳』

著者
山元 賢治 [著]
出版社
日刊現代
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784065329030
発売日
2023/08/04
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

スティーブ・ジョブズから学んだ、傍観者でなくいつも当事者でいる意義とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

新型コロナウイルスの影響によって、わずか数年の間に多くの価値観や考え方が変貌しました。

他にもウクライナ紛争など地政学リスクによる物価高騰や、ChatGPTに代表されるAIの劇的な発展など、ビジネスと生活を一変させる出来事が次々と起きています。しかも変化のスピードは加速する一方。

そんな、未来の予測のつかない状況のなか、私たちはいかに進んでいくべきなのか? この問いに対し、『世界の先人たちに学ぶ 次世代リーダー脳』(山元賢治 著、日刊現代)の著者は次のように述べています。

個人であれ企業であれ、そんな時代をたくましく生き残るためのキーワードは、「柔軟性」でしょう。

どんな変化もポジティブに捉え、時代のニーズを読みながら、柔軟に対応していく。もちろんその際には、自分/自社ならではの付加価値をつくることを忘れないーー。

そんな個人・企業なら、世界がどう変わり、誰と・どんな仕事をすることになっても、決して困ることはないはずです。(「はじめに」より)

日本オラクルや日本IBMなどの外資系企業に勤務したのち、スティーブ・ジョブズから誘いを受け、2004年からアップル・ジャパンの代表取締役を勤めた人物。おりしもアップルが低迷していた時期にiPodの立ち上げやiPhoneの発売にかかわり、日本国内の最高責任者としてアップルの復活を間近で見てきたわけです。

そうした経験をもとに、現在は株式会社コミュニカのCTO兼創設者として、リーダーの育成や英語教育に注力されています。本書は、そんな著者が2021年に上梓した『成功する人の考え方』(Kindle版)をアップデートするかたちで執筆されたもの。

これからのリーダーに向けたメッセージを、「仕事への情熱」「コミュニケーション」「マネジメント」「思考・直感」という4つのテーマに分けて語っているのです。また各項には、著名なリーダーたちの名言も加えられています。

きょうは第2章「自分だけでは事を成せないーー『コミュニケーション』」のなかから、2つのトピックスを抜き出してみたいと思います。

主語は常に“I”にせよ

傍観者はダメである。

どんな仕事でも、

当事者になることが肝心である。

――藤田田[日本マクドナルド、日本トイザらス創業者](56ページより)

スティーブ・ジョブズは会議の冒頭で、その会議に必要ないと判断した相手を退場させていたのだそうです。つまり、当事者意識を持ち、主体的に参加できる人だけを選別していたということ。だからこそ、緊張感のある、生産性の高い会議ができていたのだろうと著者は振り返っています。

事実、ジョブズの当事者意識は非常に高く、一年に一度開催されるリーダー会議でも、必ず前日から会場に詰め、自らセットアップとリハーサルに励んでいたそう。

この姿勢は講演会でも同じでした。ジョブズが2005年、有楽町で講演したときのこと。

前日のリハーサルでは、3時間にわたって「私はこう感じる。みんなはどうだ?」「私はこの資料を1ページ前にもっていきたい。全体の流れに影響はあるか?」などと、主語を“I”にし、積極的に意見を伝えていたのです。(57ページより)

ジョブズほどの人であれば、資料の作成からリハーサルまですべてを部下に任せることくらいはできたはず。にもかかわらず当事者意識を持ち、自らの手でひとつひとつつくり上げていたわけです。

その姿を目の当たりにしたからこそ、著者は“リーダーが常に意識すべきこと”として、「主語を“I”にし、高い当事者意識を持って行動する」「逃げない姿勢を貫き、いつでも責任を取る覚悟をする」という2点を強調しているのです。覚悟をするのは怖いけれど、怖いからこそチャンスなのだとも。

高い当事者意識を持って行動することができたなら、周囲の人があなたを見る目はみるみるうちに変わっていくでしょう。

上層部は、あなたをもっと引き上げたい、より重要な役職につけて幅広く活躍させたいと思うはずです。

同僚や後輩は、ぜひこの人に協力したい、この人のようになりたいと思ってくれるでしょう。

顧客や取引先は「この人から買いたい」「この人と一緒に仕事をしたい」「うちの会社で働いてくれないだろうか」と思うことでしょう。(58〜59ページより)

意識を変えることで、自分の市場価値が大きく上がるということなのでしょう。(56ページより)

血の通ったコミュニケーションを大切に

直接会って話すのが、

お互いの悪感情を一掃する

最良の方法である。

――エイブラハム・リンカーン[アメリカ合衆国第16代大統領](64ページより)

メールやチャットなど、いまやビジネスコミュニケーションの大半はテキストで済まされるようになっています。それは便利なことでもありますが、文字だけでなく、血の通った、いわゆるFace to Faceのコミュニケーションを大切にしたいと著者は考えているそうです。

たしかにテキストベースのコミュニケーションは便利である一方、「本当に伝えたいことが伝わらない」という側面も併せ持っています。良好なコミュニケーションどころか、場合によっては相手の気分を害してしまうこともありうるわけです。

さまざまな説がありますが、相手に言いたいことが伝わる確率は、Face to Faceでボディランゲージや声の抑揚を使っても70%前後だといわれています。

顔と顔を突き合わせて、非言語情報を駆使しても、伝わる確率はわずか70%。驚きませんか? なお、電話でのコミュニケーションだとわずか30%前後、テキストになると10%前後にまで落ちるそうです。(65〜66ページより)

まずはこの点を理解してほしいとしたうえで、著者は自身の好きなことばである「ハイタッチ」にも言及しています。

1980年代頃、日本がどんどん成長している時代において、「ハイタッチ」は「ハイテク」の反対語として使われていました。テクノロジーが進化すればするほど、「元気?」「最近どう?」と声をかけ合う、アナログのコミュニケーションが大切だとされていたのです。(66ページより)

著者はこのことばが好きで、いまでも使っているのだとか。毎日の何気ない挨拶や雑談からも、相手の変化を感じ取ることは可能。常に部下の様子に目を配り、「あれ?」と感じたなら積極的に声をかけることが大切なのです。(64ページより)

各項目がコンパクトな読み切り型になっているため、自分に必要な箇所から読むことが可能。その根底には、「忙しいリーダーに、ちょっとしたスキマ時間を利用して読んでもらいたい」という思いがあるようです。

とはいえリーダーだけではなく、すべてのビジネスパーソンにとって有用な一冊だともいえます。時代がどれだけ変化しようとも変わらない本質を見極めるためにも、ぜひ参考にしたいところです。

Source: 日刊現代

メディアジーン lifehacker
2023年8月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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