時間をかけなくていいことにこだわらない、我慢しない、緩急をつける!戦略的ご機嫌メソッド

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そんな我慢はやめていい

『そんな我慢はやめていい』

著者
午堂 登紀雄 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784534060358
発売日
2023/09/01
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

時間をかけなくていいことにこだわらない、我慢しない、緩急をつける!戦略的ご機嫌メソッド

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

生きていれば我慢や忍耐が必要なときはありますし、それが原動力となることも少なくはありません。とはいえ、すべての場面や状況に当てはまるわけではなく、現実問題として我慢には「意味のある我慢」と「意味のない我慢」があるーー。

そんな我慢はやめていい 「いつも機嫌がいい自分」のつくり方』(午堂登紀雄 著、日本実業出版社)の著者は、そう述べています。

我慢することによって得られるメリットがあるという点で、「意味のある我慢」は決して無駄ではないはず。しかし、「意味のない我慢」を続けていた場合は、不機嫌になったり、気分が沈んだり、うつ状態に陥ってしまうかもしれません。そのため、「自分を追い詰める我慢」「自分をイライラさせる我慢」をやめるべきだというのです。

ちなみに、「いい人と思われたい、嫌われたくない」という思いが強い人ほど、「周囲の期待に応えなければ」「周囲に合わせなければ」と我慢してしまいがちなのだとか。

しかしそれでは、窮屈で生きづらい人生になってしまうかもしれません。無理してがんばった結果、「なぜ自分だけが損をするのか」といった不遇な人生観につながってしまう可能性も否定できないでしょう。

重要なポイントは、「人生で我慢しなければならない場面はそう多くない」という著者の指摘。多くの人は我慢することに慣れてしまっているだけで、じつはしなくてもいい我慢をしているというのです。

大切なのは「意味のある我慢」と、やめていい「意味のない我慢」を峻別し、「ここぞ!」というときは我慢して「がんばる」そうでないことは「流す」「やめる」「減らす」「逃げる」を選べる知性を獲得することです。(「人生で我慢しなければならない場面は少ないーーはじめに」より)

そこで本書では、著者が考える「やめていい我慢」を、仕事、人間関係、家事・生活、育児、教育、生き方と分かれたテーマ別に紹介しているわけです。きょうは第2章「仕事の我慢をやめる」のなかから、「『集中する場面』と『手を抜く場面』のメリハリをつける」に焦点を当ててみたいと思います。

ガツガツせずに、適当に手を抜く

いまや転職が当たり前になっているとはいえ、当然ながら最初に就職した会社で働き続ける人も少なくありません。仮に大学新卒で定年が65歳としたら、約42年間も同じ会社で働くことになるわけです。

だとすれば、つねに全力投球するような働き方を続けたのなら疲弊してしまっても不思議ではありません。それどころか、ガツガツ働いた結果、途中で息切れしたり飽きたりして、モチベーションが下がってしまうことも考えられるでしょう。

事実、「全社改革」などといった刺激的なプロジェクトが終わったあと、抜け殻のようになってやる気を失い、結局は転職してしまうという事例は少なくないようです。おそらくそれは、そのプロジェクトがあまりに非日常的だったため、ぬるい日常、ぬるい働き方に我慢できなくなってしまうからではないか。著者はそう分析しています。

プロジェクトが終わって日常業務に戻った途端、ぽっかりと穴が空いたようなむなしさ、つまらなさに襲われてしまうということです。

私がかつて四年間勤めた外資コンサルのように、「短期的に自分を追い込む筋トレ」的な働き方もありますが、やはり長く勤めるには向いていないように思います。実際、ほとんどの人が修行期間という感じで数年で転職していきますから。

一〇年以上続いている人は緩急をうまく使い分け、集中する場面と流す場面を組み合わせているようです。(67ページより)

つまり大切なのは、あまりガツガツすることなく、適当に手を抜きながら、重要なところだけダッシュするという“メリハリをつけた働き方”をすること。実際のところ、そのほうが「継続」には向いているということのようです。(66ページより)

手抜きとは生産性を上げること

仕事の我慢を減らすとは、手抜きをすること。それは雑にこなすということではなく、同じ労力でアウトプットを最大化させる、あるいは同じアウトプットなら最小の労力でこなすことです。これを「生産性を上げる」と呼びます。つまり仕事の手抜きとは生産性の向上にほかなりません。(68ページより)

たとえば社内向け資料をつくるとき、フォントやレイアウトに必要以上の時間をかけたとしても、それが自分の価値や評価につながるわけではありません。せいぜい「きれいだね」とほめられる程度でしょう。それよりも、その時間を省いていったん提出し、フィードバックを受けてブラッシュアップしたほうがいいはず。

“生産性を上げる手抜き”をしたいのであれば、まずはこうした「時間をかけても仕方がない仕事」をしていないかに気づく感受性が必要だということです。(68ページより)

コロナで簡単になった手抜き仕事

また、とくにルーチンワークこそつねに自動化・オンライン化を考えることです。たとえばデータの集計作業などはエクセルでマクロを組んだりしている人は多いと思いますし、文書や文章表現などは、過去につくったものを上書きしたりコピペしたりして使い回している人も多いと思います(ただし宛名などを上書きせず間違って送ることもあるので注意が必要です。(70ページより)

なお、2019年からの新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークやテレワークが普及し、より手抜きが簡単になったことを著者は指摘しています。通勤時間がなくなり、重要ではない会議は削減され、どうでもいい面会もなくなり、緊急性や重要性が低い出張や訪問もなくなったわけです。

請求書なども郵送ではなくPDFで送るようになり、電子印鑑が導入されている企業では稟議書の回覧などもオンラインで済ませられるようになりました。

Slackなどのプロジェクト管理ツールによって進捗状況がオンラインで可視化され、昭和の時代のような報・連・相も不要となりつつあります。(71ページより)

コロナの勢いが弱まってきた昨今ではもとに戻ってきた部分もあるかもしれませんが、それでもコロナ前とはだいぶ違っているはず。したがって自分のペースで仕事ができるため、自己管理ができる人にとっては非常に有利であるわけです。

「意味のない我慢」をせずに仕事を進めていくうえで、これは重要なポイントであるといえそうです。(70ページより)

意味のない我慢をやめれば、「すぐにイライラしてしまう自分」と決別できるはず。その結果、いつもいい気分で毎日を過ごせるようになるでしょう。本書の内容を参考にしながら、ぜひともそこにたどり着いてみたいものです。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2023年9月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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