『ぼくのコーヒー地図』
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<書評>『ぼくのコーヒー地図』岡本仁 著
[レビュアー] 永江朗(書評家)
◆息詰まる毎日に必要な空間
昨今はたいへんなコーヒー・ブーム。自宅で豆を挽(ひ)いて淹(い)れる人も多い。しかし著者は「家ではコーヒーを飲まない」のだそうだ。毎日のようにコーヒー店で飲む。仕事をしていて気分を一新したいとき、手持ち無沙汰なとき、歩き疲れたとき。編集者であり、人気エッセイストでもある著者は、全国のさまざまな街を訪れる。そして、入ったコーヒー店の写真を短い文章とともにインスタグラムに投稿している(IDはmanincafe)。それがこの本のもとになった。
北海道から鹿児島まで全国58都市、166店が登場する。昔ながらの喫茶店もあれば、最近できたおしゃれなカフェもある。私の好きな店もいくつか紹介されている。どの店にも共通しているのは居心地の良さだ。写真と文章から店内の空気が伝わってくる。
息が詰まるような毎日のなかで、こういう空間とこういう時間こそが必要だと痛感する。一杯のコーヒーを飲みながらぼんやりすごす瞬間に人生がある。この本はたんなるガイドブックではない。
(平凡社・2420円)
1954年生まれ。編集者。著書『果てしのない本の話』など。
◆もう1冊
『僕は珈琲』片岡義男著(光文社)。コーヒーにまつわる映画や音楽の思い出をつづる。