頭がよくなる、脳が覚醒する「音楽」のすごい聞き方

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すごい音楽脳

『すごい音楽脳』

著者
宮﨑敦子 [著]
出版社
すばる舎
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784799111673
発売日
2023/10/23
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

頭がよくなる、脳が覚醒する「音楽」のすごい聞き方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

音楽を使うと、

脳が覚醒する。

作業のスピードが上がる。

読解力が上がる。

身体能力が上がる。

認知症予防になる。

記憶、集中、判断、実行のために必要な「認知機能」が上がり、パフォーマンスが上がる。仕事、勉強、コミュニケーション、家事、日常生活の作業効率が上がる。(「はじめに」より)

すごい音楽脳』(宮﨑敦子 著、すばる舎)の著者は、このように述べています。脳と音楽の関係、ドラムを用いた認知症予防・改善プログラム開発などの研究を行なっているという医学博士。一方、Dr.DJ.ATSUKO名義で、長年にわたりDJ活動も続けてもいるのだとか。

本書ではそうした実績や経験をベースに、音楽を使って楽しく、効率的に頭をよくする方法を紹介しているわけです。とはいえ「ピアノを演奏しましょう」というような難しい内容ではなく、勧められている内容はいたってシンプル。音楽を聴く、歌う、踊る、ドラムや太鼓を好きなように叩くなど、身近なことをするだけだというのです。

「仕事や勉強で伸び悩んでいる」「力を発揮できない」「なにごとも処理速度を上げられない」「認知機能の低下を感じている」「認知症を予防したい」というような方には、とくに効果的だそう。たとえば著者が行った実験では、速いテンポの曲をなにかの作業前に聴くと作業スピードが上がるということがわかったのだといいます。

DJをやって驚くのは、音楽が人の行動を簡単にコントロールしてしまうことです。

音楽の力を借りれば、人を盛り上げられる、クールダウンさせられる。

音楽には、人を変えることができる、すごい力があります。(「はじめに」より)

でも、それはなぜなのでしょうか? CHAPTER 1「音楽を使うと、効果的に頭がよくなる!」のなかから要点を抜き出してみましょう。

「手軽」「簡単」「楽しい」が他の脳トレとの違い!

音楽の力によって脳の機能を上げると聞けば、すぐに思い出すのは「脳トレ」ではないでしょうか? 脳トレをすれば脳の機能が上がり、直接トレーニングしていない能力までもがアップするようになるわけです。また脳機能が上がると、勉強もプライベートも充実し、認知症リスク低減の効果も期待できるといいます。

一方、音楽を聴いたり、音楽を使うことにも効果があるようです。脳機能が上がり、生活上の作業効率がよくなるというのです。また、認知機能を向上させ、低下することも予防できるといいます。しかも音楽を使う手法は、手軽で簡単で楽しくもあります。(32ページより)

リズムがあると、神経疾患の方でも歩けてしまう

パーキンソン病をご存知でしょうか? 進行すると筋肉がこわばり、歩行障害が起こる病気。小刻みで、前かがみになるため突進歩行が起こり、また、最初の一歩が出にくい「すくみ足」の症状もあるようです。

そんなパーキンソン病の方のために、リズムや音楽を使ったリハビリの研究が出始めたのは30年ほど前のこと。

驚くことに、リズムがあると、うまく歩けるのです。

これを知り、私は認知症と音楽も相性が良さそうだと思いました。

そこで私は、音楽を使うことで、重度認知症の方でもできるプログラムや認知症予備軍、あるいは健常な方のための認知症予防プログラムをつくり、効果検証を行なうようになりました。(37ページより)

音楽を聴く、歌う、ダンスする、ドラムをたたくなどの方法で脳機能を使い、体を動かすことを通じ、認知機能や身体機能を上げる研究をしたというのです。その結果、少しずつ成果が出てきたそう。ポイントは、どれも高齢者の方が実際にできたことだという点。つまり、年齢を問わず多くの人によい影響を与えることが証明されたということです。(36ページより)

前頭葉の機能を上げるリズムの力とは?

リズムは脳の活動を変えるため、リズムを感じながら音楽を聴くことや、リズムを感じながらプログラムを行うことが重要。著者はそう主張しています。具体的には以下の行為が、自身の研究からいえる“脳機能を上げる秘訣”だというのです。

テンポの速い曲を聴く

テンポが速い曲を聴いてから物事や作業に臨むと、脳が覚醒するのだそうです。しかも集中してやったときと作業の質は変わらず、作業のスピードが上がるというのです。そのため、パフォーマンスが上がるわけです。

歌本を使って歌う

「歌本カラオケ」とは、歌詞の書かれたもの(本、カード、スマホなど)を見ながら歌うこと。タイミングを合わせて歌うことが重要で、音程もきちんと合わせなければなりません。そうした行為が脳に負荷をかけることになるため、しっかりと効果的な脳トレになるわけです。

慣れ親しんだ曲で踊る

ダンスは、音楽、歌詞、節、拍から成り立っており、さらにはそれに合わせて振りつけ(踊り)も加わります。そのため、曲のタイミングに合わせてしっかり動くことになるのです。タイミングに合わせて動くことは、優れた脳のトレーニングなのです。

ドラムをたたく

ドラムをたたくことは、リズムを感じることそのもの。したがって、たたくだけで認知機能が上がるのだといいます。

著者の研究によれば、とくにカラオケ、ダンス、ドラムのトレーニングを行うことに共通したメリットがあったのだそうです。

それは、FABのスコアが高まることです。FABとは、前頭葉機能検査です。FABは前頭葉の機能を評価するテストで、18点満点で構成され、得点が低いほど前頭葉の機能である実行機能がうまくできていないことを示します。

前頭葉は人間だけが大きく発達しています。動物にはできないが、人間ができること。人間として生きる上で大事な働きを司っています。前頭葉は実行機能の中枢部分で、日常生活の多くの側面で不可欠な役割を果たしているのです。(41ページより)

しかし前頭葉は加齢に弱く、その部位の脳の体積減少が顕著。しかし音楽を使ったプログラムを行うと、年齢を重ねている人でも前頭葉の機能を改善することができるのだそうです。(38ページより)

リズムは、私たちが動きやすいようにサポートしてくれるもの。若い人だけでなく、高齢者の方々や軽度認知障害、認知症の方々に参加してもらった実験でも、成果がだんだん出てきたのだといいます。だからこそ、本書を活用してみるべき。しかもすべて行う必要はなく、好きなことをやってみるだけでOKだというので、気軽に取り組めそうです。

Source: すばる舎

メディアジーン lifehacker
2023年11月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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