「アメリカ人であることを誇りに思う」Z世代はわずか「2割」…Z世代からアメリカを読み解く一冊

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Z世代のアメリカ

『Z世代のアメリカ』

著者
三牧, 聖子, 1981-
出版社
NHK出版
ISBN
9784140887004
価格
1,023円(税込)

書籍情報:openBD

「特別な国」の終わり「弱いアメリカ」の行く末は?

[レビュアー] 杉田弘毅(共同通信社論説委員長)

 注目のアメリカ研究者による挑戦的な本だ。ウクライナ戦争を機に専制主義の脅威や台湾有事への対応が盛んに語られる日本では、「強いアメリカ」待望論が主流である。アメリカ頼みは日本の現実だ。だが、その「強いアメリカ」論に疑義を挟んだ。

 評者は著者と今春会合で同席した際に、「米国批判はロシアを敗北させた後で」と語った。緊急時は同盟国の足を引っ張るべきでない、との思いからだ。

 しかし、本書を読むと、アメリカ頼みが今の「現実」、特に米国のZ世代の真情とかけ離れており、日米関係の在り方を直視しない安易な思考であるとひしひしと感じる。著者の言う通り、普段は他国への介入を批判しながら危機には米国に頼るという日本人の二重規範は情けない。

 1997年から2012年に生まれたZ世代。01年の9・11に始まるテロとの戦いを生き、「強い」ではなく「弱いアメリカ」が彼らの正直な思いだという。肥大化する軍事費、おざなりの社会保障、教育費の高騰、インフレ、差別と憎悪、民主主義不信など、弱さに直面してきた。

 何しろ米国人であることを誇りに思うZ世代はわずか二割だ。「国家安全保障」万能の風潮に疑問を投げかけ、少数派代表であるはずのハリス副大統領のエリート的偽善を見抜く。

 著者はZ世代を通して自らの論も語る。ロシアを批判するならば、アメリカが「テロとの戦い」の名のもとで行った国際規範無視の数々の行動と膨大な住民の命の略奪をも「きっちり批判すべきだ」と。

 読ませるのが、アメリカ批判タブーの風潮はアメリカを信頼しないからだ、という指摘だ。議論を礎にするアメリカには批判を受け入れ改善する力がある。本当にアメリカに期待するなら、真剣に批判し関与すべきなのだ。

 確かに南北戦争、ニューディール、公民権運動、ベトナム戦争とウォーターゲート事件、そして冷戦の勝利と、アメリカは誕生以来の矛盾を超えるべくもがき成果を挙げた。トランプ時代の絶望的な「分極化」もまたもがきの一つかもしれない。

 さて「弱いアメリカ」の行く末はどこか。パワーと道義性を掲げ特別な責任を持つ国として平和と繁栄、そして戦争と抑圧をもたらしたアメリカ。その「例外主義」が著者の述べるように終わり、世界への口出しと武力行使を慎む「普通の国」へ変わるのだろうか。

 世界の慨嘆をよそに、ウクライナ支援の対立から議長不在が長く続いた米議会は示唆的だ。今のアメリカを知る必読書である。

新潮社 週刊新潮
2023年11月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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