『科学技術の軍事利用』橳島次郎著

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『科学技術の軍事利用』橳島次郎著

[レビュアー] 小泉悠(安全保障研究者・東京大准教授)

 無人兵器、レーザー砲、サイバー戦――これらはもはや夢物語ではない。テクノロジーの進歩は、SFメカを現実の兵器に変えており、人工知能制御のロボット兵器の出現さえ時間の問題とされている。

 こうした中にあっても、兵士の身体に不可逆的な改変を加えるような軍事技術、本書の副題にある「兵士の強化改造」はまだ大々的な実用化に至っていない。兵士の体にアシスト用の強化外骨格を装着するような構想は各国が進めているが、例えば手足を切断してロボット化するような方法は、考えるだにおぞましいし、どの軍事大国も二の足を踏んでいるからだ。

 だが、軍事的に有効となればいつかは実用化されてきたことを歴史は教えている。本書はその可能性に真正面から向き合い、兵士の身体改造が孕(はら)む問題点を生命倫理の観点から深く、かつわかりやすく論じた一冊として興味深いものであった。著者が軍事ではなく生命倫理の専門家であるからこそ書きえたものと言えよう。科学技術を軍事的有用性の観点からのみ論じがちな安全保障専門家にこそ一読を勧めたい。(平凡社新書、1034円)

読売新聞
2023年11月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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