『白の服飾史 人はなぜ「白」を着るのか』ニーナ・エドワーズ著

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白の服飾史 : 人はなぜ「白」を着るのか

『白の服飾史 : 人はなぜ「白」を着るのか』

著者
Edwards, Nina高里, ひろ
出版社
原書房
ISBN
9784562073368
価格
3,960円(税込)

書籍情報:openBD

『白の服飾史 人はなぜ「白」を着るのか』ニーナ・エドワーズ著

[レビュアー] 小池寿子(美術史家・国学院大教授)

「輝き」から「病・死」 多様な意味

 ずばり、タイトルの問いに多角的な視点から応える書である。シャツ/ブラウスや下着、夏服やスポーツウェア、ウェディングドレス、また看護服や修道服など、日常使いから特別な装い、職服までさまざまな白のシーンが思い浮ぶ。透け感があっても清潔で純な印象を与える白は、輝く光の効果もあるかと思えば病や死を想起させ、色がないとも受け取れよう。

 古代の神々の服、聖職者や制服などを取り上げた第一、二章では、白の神聖性や清潔感などが開陳されるが、第三、四章では、18世紀末までファッションを牽引(けんいん)した男性ファッション、帽子やレース飾り、奇妙奇天烈(きてれつ)なかつらなど風俗風習の形成、文化の嗜好(しこう)と変遷が綴(つづ)られる。東方交易によるシルクなどの布地がいかに富の象徴として機能したか、リネン(亜麻)や綿などの白布を洗濯、漂白する苦労と技術改良も紹介され、第五章「下着と汚れ」では補正下着や清潔感も語られる。高性能の洗濯機と白さと香りを謳(うた)った洗剤が当たり前の今、目から鱗(うろこ)の話だ。

 さらに第六章「メレンゲとシルクサテンのシフト」では、花嫁衣装を中心に、布地の質感や纏(まと)う人の意識がつづれ織りとなる。因(ちな)みにメレンゲはふわふわした布地を指し、シフトは光沢のあるサテンの切り替えのないドレスのこと。このふわふわ感は18世紀にヴェルサイユ宮殿でブレークした白衣の代表モスリン(平織薄地)に追随する。第七章「ハイファッションとストリートファッション」では両者の相違と類似に焦点を当て、映画を巧みに組み込んで白の役割を浮き彫りにする。そして文学のみならず宗教観をも盛り込んだ終章「ホワイトアウト」で、私たちはまさに白の多様な意味と錯綜(さくそう)した歴史の雪景色の中で道を見失うのだ。はて、なぜ白を纏うのか、と。

 本書の原題にはPazazzとの用語がついている。訳者あとがきによれば、「華」や「粋」を感じさせる「わくわくさせるような性質やスタイル」という。著者自身の経験談を縦横に織り交ぜた本書を閉じる時、このPazazz感を身に纏うだろう。高里ひろ訳。(原書房、3960円)

読売新聞
2023年11月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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