『浮世絵でみる!動物図鑑』中右瑛監修

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『浮世絵でみる!動物図鑑』中右瑛監修

[レビュアー] 堀川惠子(ノンフィクション作家)

 ご覧の月岡芳年の浮世絵は、ネコが娘に、いや、娘のほうがネコにまとわりついている。題名は「うるささう」。娘は自分の襦袢(じゅばん)と同じ布切れでネコの首輪までこしらえる執着ぶりだが、ネコはどことなく迷惑顔。今でもありそうな光景に思わずクスリ。

 歌麿に広重、北斎ら江戸や明治の浮世絵から、動物が登場する約160点を集めた。一番人気のネコはもちろん、犬に金魚、兎(うさぎ)、象にラクダ、さらには獅子や河童(かっぱ)、鵺(ぬえ)など空想上の珍獣や妖怪もどきまで。最近、動物の絵といえば目がクリクリしたり丸っこかったり、愛らしさばかりが強調されがちだが、浮世絵の動物たちはどこかシュール。滑稽だったり、怪しかったり、怖かったり。攘夷(じょうい)に揺れる幕末には、弱腰で煮え切らない幕府を大タコに例える風刺画も。動物たちの七変化は人間界の世相や滑稽さまで表現していて、絵師の眼差(まなざ)しの奥深さも感じる。(パイ インターナショナル、2640円)

読売新聞
2023年11月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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