『浮世絵でみる!動物図鑑』
- 著者
- 中右瑛 [監修]
- 出版社
- パイ インターナショナル
- ジャンル
- 芸術・生活/絵画・彫刻
- ISBN
- 9784756257710
- 発売日
- 2023/08/19
- 価格
- 2,640円(税込)
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『浮世絵でみる!動物図鑑』中右瑛監修
[レビュアー] 堀川惠子(ノンフィクション作家)
ご覧の月岡芳年の浮世絵は、ネコが娘に、いや、娘のほうがネコにまとわりついている。題名は「うるささう」。娘は自分の襦袢(じゅばん)と同じ布切れでネコの首輪までこしらえる執着ぶりだが、ネコはどことなく迷惑顔。今でもありそうな光景に思わずクスリ。
歌麿に広重、北斎ら江戸や明治の浮世絵から、動物が登場する約160点を集めた。一番人気のネコはもちろん、犬に金魚、兎(うさぎ)、象にラクダ、さらには獅子や河童(かっぱ)、鵺(ぬえ)など空想上の珍獣や妖怪もどきまで。最近、動物の絵といえば目がクリクリしたり丸っこかったり、愛らしさばかりが強調されがちだが、浮世絵の動物たちはどこかシュール。滑稽だったり、怪しかったり、怖かったり。攘夷(じょうい)に揺れる幕末には、弱腰で煮え切らない幕府を大タコに例える風刺画も。動物たちの七変化は人間界の世相や滑稽さまで表現していて、絵師の眼差(まなざ)しの奥深さも感じる。(パイ インターナショナル、2640円)