『五輪汚職』
- 著者
- 読売新聞社会部取材班 [著]
- 出版社
- 中央公論新社
- ジャンル
- 社会科学/社会
- ISBN
- 9784120056932
- 発売日
- 2023/09/21
- 価格
- 1,760円(税込)
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『五輪汚職』読売新聞社会部取材班著
[レビュアー] 堀川惠子(ノンフィクション作家)
本紙スクープから報道が始まった東京五輪の汚職事件、その舞台裏をまとめた。記者がどう情報を入手したかは取材秘だが、行間には記事化しにくい事象を読むヒントが盛り沢山。
「東京五輪の招致は、僕でなければできなかった」。逮捕前、記者に豪語した大会組織委員会元理事の高橋治之被告。力の源泉は森喜朗元総理の「後ろ盾」。ふたりを接待する銀座カラオケ店、組織委の女性職員ら5人が「秘密戦隊ゴレンジャー」に扮(ふん)して歌と踊りで盛り上げた。フランス当局が立件に至らなかった竹田恒和・招致委元理事長。業者からの賄賂を高橋被告やその知人、竹田氏の3人で「三等分」する計画が裁判で明らかに。
入札は骨抜き、膨らんだ支払いのツケは国民に。「公正とか競争とか頭の中になかった」。関係者の証言はズブズブの五輪利権の実態そのものだ。組織委は十分な情報公開をせぬまま解散、スポンサー契約やライセンス商品の選定をめぐる詳細、電通がいくら手数料を得たかは一切不明のままという。これで再発防止など果たせるのか。怒りを忘れぬための一冊。(中央公論新社、1760円)