『地雷グリコ』
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ジャンケン、かるた、トランプで競う本格ミステリー&バトル&学園小説
[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)
これはゲーム小説だというと、即パソコンやスマホを使うハイテクなゲームのことだと思うだろう。だが本書で出てくるのはジャンケンやかるた、トランプといった老若男女にお馴染みのものばかり。ただし、そこにこの著者ならではの一手間が加えられているのであるが。
全五篇の頭にある表題作は、文化祭を控えた都立頬白高校で行われる、イベントや模擬店の場所決めの争奪戦――愚煙試合の顛末が描かれる。二年連続で優勝している生徒会の代表・三年男子の椚迅人と相対するのは、だらしない恰好でいちごオレをすする一年女子の射守矢真兎。審判役の塗辺が二人に提示したのは、神社の四六段の階段で行うジャンケンゲームのグリコだった――ただし、互いに三つの段に地雷を仕掛け、そこを踏んだら一〇段下がらなければならない。グリコは必ず三の倍数で進むゲームだが……。
数学的な読み合いと相手の意表をつくダマし合い。グリコといえば、グーチョキパーに合わせて、グリコ、チヨコレイト、パイナツプルと大声で呼び進むあれですが、他愛ない児戯と思ったら大間違い。一手間加わるだけでこんな面白くなるなんて。
続く「坊主衰弱」は真兎が窮地に陥ったかるた部のために一肌脱いで、百人一首の坊主めくりにトランプの神経衰弱をアレンジしたゲームで戦い、さらに「自由律ジャンケン」では、強面の生徒会長とグーチョキパーに新手を加えた五種のジャンケンで戦うことに。
そして「だるまさんがかぞえた」と「フォールーム・ポーカー」では、語り手の鉱田ちゃんを始め、今やチームと化した真兎たちが校外に出、優秀だが秘密の多い埼玉の星越高校の面々との戦いが描かれるが、これは真兎と星越生の旧友・雨季田絵空との因縁に決着をつけるものでもあった! というわけで、青春学園ものとしても読み応え上等の連作ミステリーに仕上がっている。