夢物語ではない「老化」の治療最前線! 脳の“思春期”を取り戻すことも重要

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老化は治療できるか

『老化は治療できるか』

著者
河合 香織 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166614325
発売日
2023/11/17
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

浮かび上がってくるのは 睡眠、運動、食事の重要さ

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)


アンチエイジングの最前線を追う(※画像はイメージ)

 河合香織著『老化は治療できるか』は、一見して奇妙なタイトルと見える。だが老年期医学は急速に進歩しており、老化を「治療」することが今や視界に入りつつある。本書はトップ研究者たちへのインタビューを基礎とした、この分野の最前線リポートだ。

 すでに、ゲノム編集などの技術をフルに使えば、最大寿命を延ばすことは可能だという。また、一〇年か二〇年後には、一〇〇歳まで元気で寝たきりにならず、一二〇歳まで生きられる時代が来ると予測する研究者もいる。いくつか抗老化薬の候補も見つかっており、その作用も解明されつつあるから、人生一二〇年時代は夢物語などではない。ただしそれに便乗した怪しげなビジネスも横行しており、気軽に手を出すべきものではなさそうだ。

 こうした研究が進むにつれて浮かび上がってくるのは、睡眠や運動、食事といった、一見ごく当たり前の事柄の重要さだ。本書ではこれらのことについても、かなりのページが割かれている。奇跡の薬や先端技術を待つより、まずはよく運動し、よく眠ることこそが本道に違いない。

 本書のもう一つの特徴は、長くなった老後をいかに生きるかについても、一章が費やされている点だ。老年期に入っても社会とのつながりを保ち、年をとったからと諦めることをせず、脳の「思春期」を取り戻す。なかなか難しいことではあるだろうが、長い老後を見据えて一読の価値があるメッセージだ。

新潮社 週刊新潮
2023年12月21日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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