【聞きたい。】吉川祐介さん 『限界分譲地』 「荒廃と流入」併存のリアル

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限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話

『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』

著者
吉川祐介 [著]
出版社
朝日新聞出版
ISBN
9784022952523
発売日
2024/01/12
価格
957円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】吉川祐介さん 『限界分譲地』 「荒廃と流入」併存のリアル

[文] 磨井慎吾


吉川祐介さん

千葉県北東部。東京郊外と農村部の境界にあたるこのエリアには、田園風景の中に十数戸から数十戸程度の小規模な住宅分譲地が点在する。だが、これら分譲地に実際に建てられた家屋はわずかで、大半の区画は何十年も更地で残されたまま。

「最初に見たときは、空き地の数に驚きましたよ。意味が分からなかった」

そう語る著者は、自らもこうした「限界分譲地」に住む。平成29年、結婚を機に安くて広い家を求めて東京都江東区から千葉県八街市に移り、同年にブログ「URBANSPRAWL 限界ニュータウン探訪記」を開設。現在は同県横芝光町の九十九里浜に近い地区に居を移し、周辺地域を実際に歩いて調べた詳細なルポ記事が人気だ。

なぜ、こんな分譲地が大量に生み出されて、現在どのような問題が生じているのか。本書は、その実態に迫る。

「限界分譲地は、1970年代から80年代にかけて開発されました。ほとんどは住宅地としての実需ではなく、値上がり後の売却をにらんだ投機目的で取得されたので、空き地と建物の割合が逆転していることが特徴です。それがバブル崩壊後に地価が暴落して売るに売れなくなり、今や値段も付かず放置されているのが実情です」

中小業者が乱雑に開発した小規模分譲地は、いまや私設上下水道の老朽化など深刻なインフラの問題を抱えるが、私有地ゆえに行政の支援が入らない。相続しても維持費がかかるだけで使い道がなく、管理を放棄して連絡がつかない不在地主も多い。一方で、最近では建築費高騰などを背景に一定の中古住宅需要も発生し、荒廃した土地と新規流入がみられる場所がまだら状に入り交じるのが現状だ。

「中心市街地に利便施設を束ねて、住民を集住させるという『コンパクトシティ』化がよく言われますが、すると周辺部が安くなるので、安さを求めてそちらに住む人が出てくる。偉い人が思い描くように、きれいに収縮はしていかない。民間任せでは、集約は進まないと思いますよ」

街の衰退は、一斉に人がいなくなるわけではない。荒廃はじわじわと、虫食い状に進む―。日本が直面する衰退のリアルを描き出す。(朝日新書・957円)

磨井慎吾

   ◇

【プロフィル】吉川祐介

よしかわ・ゆうすけ 文筆業。昭和56年、静岡県生まれ。千葉県横芝光町在住。著書に『限界ニュータウン』がある。

産経新聞
2024年1月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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