『大ピンチずかん』
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『大ピンチずかん2』
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子どもも大人も楽しめる!絵本『大ピンチずかん』鈴木のりたけさんにインタビュー!
[文] 日本出版販売(日本出版販売)
牛乳をこぼしちゃった、目にシャンプーが入っちゃった……子どもが直面する“大ピンチ”の数々をユーモアたっぷりに描いた『大ピンチずかん』(鈴木のりたけ著、小学館)シリーズ。現在までに2冊が発売され、シリーズ累計発行部数は100万部を突破しています。
2男1女の父親である著者の鈴木さんは、『大ピンチずかん』をつくる際に子どもたちの助けがあったと明かします。本書の楽しみ方から鈴木さんの仕事への思い、そして子どもに良い影響を与える大人の姿とはどんなものか、話を聞きました。
(前後編の後編)
愛とか友情、感謝や因果応報を伝えるのではない絵本
――『大ピンチずかん』のネタ探しだけでも大変だったのではないかと思いますが、創作で苦労された点はありますか。
苦労はなかったですね。『大ピンチずかん』という本を作ろうとしていると言って、子どもたちの大ピンチをスマートフォンにメモっていたら、子どもたちも「お父さん、今これ、大ピンチじゃない?」と僕のスマホに自分たちでメモをし始めて。大ピンチは日々起こるので、そういったやりとりも楽しかったです。
一つだけあるとすれば、本書は大ピンチレベルの大きさで並べている以外にも、たとえば家の中での出来事から、親と一緒に出掛けたり学校に行ったり、友だちと遠出したりとページが進むにしたがって、主人公の世界がより広がっていきます。
「ずかん」とはいえ絵本ではあるので、子どもたちが入りやすいよう、安心して楽しめるような作り方の工夫をしています。最後にネタをパズルみたいにして本の構成を考えたのですが、子どもたちの成長の場面と緩やかに合わさって、お話としてうまく流れるように作るのには頭を使いました。
――「ずかん」の名の通りさまざまな大ピンチが収められた2冊ですが、分類、分析といった視点でも楽しめますね。
担当編集者が図鑑の編集をしていたこともあるので、図鑑のフォーマットや語り口に寄せていった部分もあります。
これまで絵本は、愛とか友情、感謝や因果応報といった、どちらかというと情操教育的な、定量化しづらいような情報を文字と絵でじんわりと伝えるメディアだったと思います。しかし今の時代、おもしろい情報にダイレクトに早くタッチして、感じたいし笑いたいという思いは子どもたちの中にもあるのではないでしょうか。
だからこそ、ページをめくっていて、「これはわかる」「この間同じことがあった」と共感できると読者と近寄りやすいですし、間口も広がりやすい気がしていて。そういう本を作りたいなという思いは昔から持っていました。
――『大ピンチずかん2』を読んだ知人の子どもは「こころぼそいって何?」と聞いたそうですが、この単語が出てくるのは本書の終わりのほうの欄外です。子どもが隅々まで読み、知らない言葉に反応しているのだなと驚きました。
難しい言葉もなるべくカットせずに、むしろそのまま載せていこうと思っています。「こころぼそい」という言葉を覚える機会を僕が奪うことになってもいけないですよね。わからないかもしれないからと、「さびしい気持ち」といった言葉に置き換えるのではなくて、これを機にここで覚えようよ、と。
それは、子どもたちと一緒に本を読む親御さんたちの力を借りるということでもあります。生身の人間同士のコミュニケーションに勝るものはないですし、特に親御さんとの触れ合いは何より心に残るでしょう。絵本もそういう場面が起こるようなものであるべきだと思います。
僕も子どもたちの小さい頃には絵本の読み聞かせをしましたけれど、あまり本の通りには読まなかったです。普通に読んでいると、「書いてある通りに読まないで」と言われるくらいオリジナルな形で読んでいましたし、「今日はこの本、固くて開かないな」と言って1ページもめくらずに終わったこともあります。
僕の本も、どちらかといえば読んでほしいですが(笑)、そういう親子のコミュニケーションに使ってもらえたら作家冥利につきますし、本望だなと思います。