「一日一組限定」の「家族葬」…葬儀社に勤めていた作家が語る“理想”の葬儀とは

インタビュー

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夜明けのはざま

『夜明けのはざま』

著者
町田, そのこ, 1980-
出版社
ポプラ社
ISBN
9784591179802
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

町田そのこ最新刊『夜明けのはざま』インタビュー:ままならなさに歯噛みする、誰かに寄り添う物語!

[文] 日本出版販売(日本出版販売)


葬儀社での勤務経験がある作家・町田そのこさん

コロナ禍を期に、日本人の「葬儀」に対する考え方は変化してきています。

かつての葬儀は、近所の人やお世話になった人を呼んで大々的に行うものでしたが、今は少人数で行う家族葬がかなり広まりました。葬式を行わない直葬を選択する人も出てきています。

そんな中、過去に葬儀社での勤務経験がある作家の町田そのこさんが、家族葬専門の葬儀場を舞台にした連作短編集『夜明けのはざま』を刊行しました。

語り手となるのは、仕事と結婚の間で揺れ動く葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになったシングルマザー、葬儀社の新人社員、元恋人の訃報を受け取った主婦ら、それぞれの事情で葬儀に関わることになった人物たち。「葬儀」の意味とは、また身近な人の死を通し、生と向き合う姿についても描かれた本書について、話を伺いました。

■「死」があるからこそ「生きる」ことが際立つ。舞台は町田さんの理想の葬儀場

――本作は、家族葬を専門に執り行う「芥子実庵」を舞台に展開されますが、なぜ葬儀社を舞台にしようと思われたのですか。

これまでも、“生きづらさ”や“生きていく上での障害の多さ”といったものを作品に書いてきましたが、嫌なこともトラブルも乗り越えて、それでも生きていかなくてはいけないということを物語にできたらいいなと考えていました。今回依頼をいただいたときにも、ちょっと括りが大きいですけれど、「生きる」ことを起点に連作短編を書きたいとお話ししました。

私は『ぎょらん』でも葬儀社を舞台にしていますが、あの作品は、死と向き合う、死を乗り越えるという「死」そのものがテーマでした。

今回も死はもちろん出てくるのですが、死は誰にでも必ず訪れるものです。そのタイムリミットがあるからこそ、生きている時間をどう使っていくか、生きていくときの障害にどう向き合っていくかという、生きているからこそ直面している問題が際立つのではないかと考えました。

――豊かな庭に囲まれた、古民家をリノベーションした一軒家。和を基調としながらも、バスルームや寝室は高級ホテルのような設えで、葬儀は一日1組限定のため、故人との最後の時間を静かに過ごすことができる――。そんな設定の芥子実庵ですが、町田さんは葬儀社で働いた経験もおありだそうですね。モデルとされた施設などはありますか?

モデルは特にないのですが、私が以前勤めていた葬儀社は、1階、2階に別館もあって、葬儀が重なってもOKというところでした。でも、ほかの人のことを気にしなくてよくて、葬儀社のスタッフも自分のところだけを見てくれる環境だと、残された家族もリラックスできるのではないかなと思い、自分が見送られるときにも理想と思える葬儀社と場所を書いています。

また、芥子実庵という名前は、もともとこの物語を書こうとするきっかけとなった逸話から取っています。

――「芥子の実は、どこの家にもない」、「大事な者を喪ったことのないひとなど、いない。死は誰しもに訪れ、誰しもがそれを迎え入れなければいけない」というものですね。

葬儀社を舞台にしようと思ったときに、生とは、死とは、といういわば死生観を自分の中でもう少しまとめようと思い、仏教の本をたくさん読みました。そこで芥子の実の逸話を読んで、「死は誰にも平等に訪れるもの」というこのエピソードはどこかに入れたいなと。また、「どういう意味だろう」と読む人の印象に残るような名前にしたら素敵かなとも思い、芥子実庵に決めました。

取材・構成:ほんのひきだし編集部 猪越

日本出版販売 ほんのひきだし
2023年11月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本出版販売

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