『ボードゲームで社会が変わる 遊戯(ゆげ)するケアへ』與那覇潤/小野卓也著/『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独』ソーシキ博士著

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ボードゲームで社会が変わる

『ボードゲームで社会が変わる』

著者
與那覇 潤 [著]/小野 卓也 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784309631714
発売日
2023/11/20
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

インディーゲーム中毒者の幸福な孤独

『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独』

著者
ソーシキ博士 [著]
出版社
集英社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784087880960
発売日
2023/12/05
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『ボードゲームで社会が変わる 遊戯(ゆげ)するケアへ』與那覇潤/小野卓也著/『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独』ソーシキ博士著

[レビュアー] 宮内悠介(作家)

「対面」「デジタル」魅力探る

 今回は「ゲーム」をテーマに、きれいに好対照をなしていた本を二冊取り上げてみたい。まず『ボードゲームで社会が変わる 遊(ゆ)戯(げ)するケアへ』が扱うのは、アナログの、人同士が顔を合わせて遊ぶボードゲームだ。與那覇潤・小野卓也両氏による対談や論考が収められているほか、有識者六名と実際にさまざまなゲームをプレイするパートもある。特色は、ボードゲームの紹介にとどまらず、なぜボードゲームに注目するのか、ボードゲームにはどのような意味があるのかと掘り下げていくところだろう。テーマはずばり、「ボードゲームを思想にする」こと。背景には、與那覇氏が鬱(うつ)状態のリハビリのためにデイケアに通い、そこでボードゲームに触れ、ボードゲームを趣味とするに至った実体験があったそうだ。共著者である小野氏は、ボードゲームのサイトを二十年近く運営し、住職でもあり、インド哲学の研究者でもあるというかた。ボードゲームの楽しさと、それが持つ未来への可能性を示唆する一冊だ。

 もう一冊、『インディーゲーム中毒者の幸福な孤独』は、なんというか、すべてにおいて正反対であるような本だ。扱われるのは、まずデジタルのインディーゲーム。著者はそれを孤独に収集し、そこに広がる一種奇妙とも言える世界にひたる。扱われるのは、「目を凝らさなければ見つからないようなインターネットのはずれた場所にある“誰か”が作った小さなゲーム」たちだ。たとえば、脳卒中で倒れたという祖母をホスピスで見舞うだけのゲーム。あるいは、認知症患者となり、その混乱や不安を体験するゲーム。戦時下のウクライナで公開されたという経営シミュレーションまである。

 デジタルゲームには、ときとして、現実以上に現実らしい臨場感が宿る。だからここに紹介されるのは、そのようなゲームにしかないリアリズム、ゲーム的リアリズムのいわば極北のような作品群なのだ。(河出新書、990円/集英社、1540円)

読売新聞
2024年2月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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